【書評】「営業マンは『お願い』するな!」加賀田晃著

2010年に64日目でストップしていた「100日ブログ」を再開します。



契約率99%の「営業の神様」が完全引退前に悩める営業マンに向けて書きおろした、初めての著書。私が加賀田氏のことを知ったのは、今から7年前。知人から何気なく借りた営業研修のDVDを見たのが最初だが、広告代理店の営業研修をホームビデオで撮影しただけの、映像としてはかなり劣悪な内容であるにも関わらず、それが私の人生を変えた。
営業は科学である。それが加賀田氏の一貫した主張であり、科学と言うからには、再現性が担保されなければならない。しかし、加賀田氏が言うには、自分自身が売ることは簡単だが、それ以上に得意なのは人に売らせること。なぜなら加賀田氏は営業に関する再現性あるノウハウを完備しており、それを伝えればいいだけだから。39歳で一線の営業マンから引退し、手探りで研修業を開始したのだが、どの会社も驚くべき営業成績を生み出し、それ以降現在に至るまで加賀田氏の研修は常に5年待ち。それゆえにPRする必要もなく、口コミだけで知られる伝説的な人物だった。
加賀田氏の研修は自身の「セールス6法」に基づいて進められるのであるが、本書はその「6法」を忠実に再現したものである。6法とは次の通り。
1.哲学編
2.礼儀編
3.話し方編
4.セオリー編
5.技術編
6.極意編

正確にはまず「哲学編」によって営業の大前提を押さえ、あとは「セオリー編」にかぶせる形で進められる。「哲学編」は本書のテーマにもあるように、お客に買ってもらうようお願いするのではなく、あくまで営業マンが主導で「売ってあげる」ものだと力説する。その考え方については、おそらく違和感のある人も多いであろう。なんせほとんどの会社が「お客様は神様」のような対応を是としており、「売ってあげる」などの高飛車な態度は営業マンにあるまじきだと考えるのだから。
しかし、営業は「結果」がすべてである。買ってもらう態度で売れるならそれでいいだろうが、実際、それで売れるほど営業は甘くない。「売ってあげる」とはまさに売ることに徹底した営業哲学であり、著者はそれで99%の契約率を残したのだから、周囲はグウの音が出ないのが実際であろう。
しかし、単に高飛車に「売ってあげる」とアプローチするだけでは、お客から嫌われるのは当然である。そうならないためには6法の通り、「礼儀」や「話し方」を徹底するのである。前提としては「売ってあげる」であったとしても、お客に嫌われては元も子もない。
そして「セオリー編」では、営業の黄金パターンを徹底的に叩きこむ。多くの営業マンはアプローチからすぐに商品説明に入るのだが、それでは嫌われて当然。飛込み営業ならなおさらのこと。アプローチからクロージングまでには、絶対に破ってはならない順版・鉄則があると言い、それが人間関係と必要性である。事実、人は同じ商品で同じ値段であれば、好意的な人、印象のよい人から買うものであり、それを作るのがまさに加賀田式人間関係構築法である。
ちなみに私も何度か加賀田氏の研修に接する機会があったのだが、どんな人間に対してでも本当に瞬時に人間関係を築くその一貫性にはビックリさせられた。エレベーターでたまたま乗り合わせたビルの清掃員に対してさえも、相手が笑顔になって気持ちよくエレベーターを降りるまでの時間、わずか数秒である。優れた営業マンになるための秘訣はもしかしたらここにあるのでは。
モノを売ろうが売るまいが、会う人を徹底して気分良くさせてしまう習慣。オンとオフを切り分けるのではなく、常にオンの状態。契約率99%、そして本書に書かれてある内容は決して嘘でないことは、実物の加賀田氏に会うと実感できるかもしれない。
そして圧巻が「極意編」にある。徹底的に相手を愛する「愛対意識」、相手は勝って当たり前と思いこむ「当然意識」、そして絶対にあきらめない「不諦意識」からなり、おそらくこれだけでもマスターすれば、他のあらゆるテクニックは必要ないかもしれない。しかし、それは決して容易ではないだろう。そのことは本書の中の原野商法での初契約エピソードを読めばわかる。これを読んでその通りにできる人は、ビジネス書など最初から読む必要ないであろう。そしてそのエピソードを読んだ読者は、大方二通りに反応が分かれるに違いない。
一方は怒って本書を放り投げる人。そしてもう一方は感動で心を震わす人。私は後者だった。どう言われようと、営業マンに徹し、その役割をまっとうするまで譲らない。昨今はインターネットが普及し、アメリカ発祥の効率的なマーケティングや、中には人と会わない営業技術なども紹介されたりするが、そのような小手先のテクニックはやがて陳腐化される。
しかし、どんな時代にあっても「絶対に売るんだ」という心構えと気迫は、扱う商品が何であれ決して色あせることはない。本書は発売一年にして20万部の大ベストセラーらしいが、今の時代にこそ、そのような古臭い、ある意味、体育会的、浪花節的な情感が悩める多くの営業マンの心を打ったのかもしれない。
本書は現役の営業マンはもちろんのこと、生きた人生哲学書としてもお勧めである。これ読んだらぶつくさ言わずにまず動くことだ。
営業マンは「お願い」するな!/加賀田 晃

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