「鏡の法則」野口嘉則著

 2007年、最も売れた本の一冊であろう。どの書店に行っても、平積みで並べられていた。 

 そもそも本書はインターネットで爆発的に広まったことを発端として、間もなく書籍化されたと言う意味で、ネット先行型ベストセラーの典型であるとも言える。

 私も本書を手にする以前、ネットを通じて読んでいた。著書のブログ「幸せ成功力を日増しに高めるEQコーチング」により。

 本書の帯には「読んだ人の9割が涙した!」と書かれてあり、それ自体は決して誇張でもないだろう。

 本書(または本書の中の物語)を読むと、確かに9割は涙するだろう。私もその一人ではある。

 しかし残りの1割の反応は、まさしく「微妙・・」である。

 さらに非常に稀なケースであるが、決して読んではならない、読ませてはならない人も存在する。

 本書の正しさ、それによる解決力、人の心を動かす力、、、それらを十分に認めた上で、本書には負の側面があることも注意する必要がある。

 本書の大筋のテーマは「原因と結果の法則」、そして「許し」である。

 現在生じている事象はすべてに「原因」がある。

 物語の中では「子どものいじめ」となっているが、もちろんそれには「原因」がある。

 子どもが悪いのか、いじめている同級生が悪いのか。

 否、物語の登場人物の一人であるカウンセラー氏は、それを母親の「心」にあると見抜き、「原因」へのアクセスを開始した。

 その結果、「原因」となるものは、その母親の家族に対する「許せない心」が元となっていることを自ら発見し、それを具体的な行動によって変えていくプロセスを取る。

 そして子どものいじめは解決する。

 鏡に写っている自分の姿を見て、髪が乱れていると気づいた場合、鏡に向かって髪を整えることはしないだろう。

 自らの髪を整え、その結果として鏡の中の自分の髪も整うもの。すべてには「原因と結果」があり、その「結果」だけを見て対処しようとするのではなく、「原因」なるものに勇気を出して目を向け、そこと対置することが重要。

 それが一見、よくわからない因果関係であったとしても、人はすべて集合意識でつながっている。

 信じようが信じまいが、それは事実である。

 本書を読むと9割の人が涙する。

 その人たちにとっては、本書は人生の羅針盤となるであろう。

 しかし残りの1割の反応は様々である。

 こんなにうまくいくはずがない、単なる事例の一つであって一般性がない、など。それも一つの意見であり、正論であろう。

 しかしここであえて言っておきたい。

 中には決して「読んではいけない」「読ませてはいけない」人が僅かながら存在することを。

 それはどういう人たちのこと言うのか。残念ながら、それをここで明かすわけにはいかない。しかし、そのことは臨床心理療法に携わる人間の間では、およそ共通認識とされている。

 ここまで言えば、わかる人にはわかるであろう。

 と言いながらも、やっぱり本書は名著であると思うし、多くの人におススメできる一冊である。

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