ここ一番の場で緊張して動悸がする

先ほど、知人と電話で話をしている時、次のような相談を受けました。

最近、人前に出ると緊張する。これまでは普通にできていたことなのに、ある日突然、緊張が走るようになり、そのことを考えると動悸が起ることもある。どうすればこの状態から脱することができるのか。

簡単ですが、このような内容。いわゆる「スランプ」の状態と言えるのでしょうか。これを聞いて、私も思いだしたことがあります。2004年に滝行を始めて、かれこれ7年目に入りましたが、その間、一度だけ「滝の中でお経が唱えられない状態」に陥ったことがありました。
普通の状態だと唱えられるのに、滝の中にはいると飛んでしまうのです。般若心経なんかも、最初の一行から飛んでしまう。観音経も同じ。そうなると、適当な時間だけ滝に入って、真言をいくつか唱えて出るしかない。そんな状態が何日か続きました。
そんなある日、突然、わかったのです。考えているから唱えられないのだ、と。般若心経なんてのは、もう、何万回となく唱えているので、完全に身体が覚えているはず。だったら「身体」に任せてしまえばいいものを、頭の中で考えている。
そして「今日も唱えられないのかな・・・」などと考えてしまったら、もう完全に飛んでしまうのです。では、この状態から脱するにはどうすればいいのか。
それは「滝の音に集中する」ことだったのです。
頭の中で考えるとをストップし、ひたすら「滝の音」を聞きながら、後は身体が勝手に般若心経を唱えるままに任せればいい。そして最後まで唱えることができました。観音経も同じ。
この相談者の方の「ここ一番の場で緊張して動悸がする」という悩みもこれに似ていると思いアドバイスしました。今まで普通にできていたことなのに、ある日突然できなくなる。この理由は簡単にわかります。
それは意識が「内的対話」の方に向いてしまったから。意識ってのは「内側」か「外側」のどちらかしか向いていません。その中間はなく、両方同時に向けることも不可能。常にどちらかなのです。
NLPでは意識が内部に向くことを「Ti」と呼び、外部に向くことを「Te」と呼んでいます。「T」とはタップル(要素)のことであり、「i」が内部(internal)、「e」が外部(external)のことを意味します。
そしてスランプ状態に多いのが圧倒的に「Ti(内的対話)」に向いている時。人が「内的対話」をする時は、そのほとんどがネガティブな対話です。それは私もそう。なぜなら人は「安心・安全」を無意識のうちに求めるため、それに反する「危険」に対する注意を向ける本能があるから。危険に注意を向けられなかったら、人類はとっくの昔に滅んでいるでしょう。
この方の場合、「内的対話」の多くは、やはり「失敗したらどうしよう」とか「緊張したらどうしよう」などの、いわゆる本能的な「内的対話」でした。そうなったきっかけはいろいろ考えられると思いますが、何かを「守りたい」などと思う出来事があったのかもしれません。
では、どうすればこのスランプ状態を脱することができるのか。答えは簡単。「Te(外部音)」に耳を傾ければいいのです。例えば会場で聞こえる人々の話声、せき込む音、空調の音、外の車の音、、、など何の意味もない「音」が聞こえているはず。
「内的対話」に夢中になっている時は、おそらく聞こえてなかったであろう音たち。そこに意識を向けることで、自然と「内的対話」に向ける割合が低くなり、同時に緊張からも解放されることでしょう。
そこで注意しなければならないのは、「外部音」を聞いたところで、その意味にまで注意を向けないこと。空調の音が聞こえたら、「空調の音」とただ客観的に認めるだけで、「今日は暑いのかな」とか思う必要もなし。
そしてさらにパワフルな方法があります。それは会場や室内から聞こえる「外部音」が自分の味方であることを意識する。そして会場・室内それ自体が「自分の手足」のように感じること。すると空気に飲まれることもなく、リラックスした状態で仕事をこなすことができるはずです。
なぜならそこには「自分を超えた力」が働いているのだから。とにかく意識を「内部」から「外部」へと向けて、その「外部」それ自体を味方だと思うこと。そのような意識で会場・室内に入ることで、緊張や動悸からは完全に解放されることでしょう。


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