- 日本に「コールドリーディング」を紹介した石井裕之氏の新刊。これまでの著書は「コールドリーディング」に関するものが続いていたが、本書及び前著の「ダメな自分を救う本」では、石井氏のセラピスト、コーチとしてのセオリーが論じられている。
- セオリーと言っても、単なるノウハウの羅列ではなく、あたかも石井氏のコーチングを受けているかのような、実践的な書である。先に値段を言うのは気がひけるが、2冊で2,600円。何人も結果を出している超一流のコーチングをたった2,600円で、しかも何度も受けられると考えたら、安いことこの上ない。個人的な話だが、今年はあまり新刊に手を伸ばすのは控えて、名著と呼ばれるものを何度も読み返そうと考えていた。が、こんな本が出てしまうと、その決心も容易に揺るいでしまう。だから新刊コーナーに行くのはやめられない。
- 石井氏のコーチングのキーワードは「潜在意識」。一貫して「潜在意識」の性質を論じ、「潜在意識」のプログラムを変えることで、目標の実現をサポートしてくれる。しかし、巷に氾濫しているような、「よいイメージを植えつけましょう」とか「目標をひたすら紙に書いて願望を結晶化させましょう」などといった、精神論で終わるものではない。今までどの本でも書かれなかった「潜在意識の重要な性格」について論じられている。それは、潜在意識の「現状維持メカニズム」である。
潜在意識の現状維持メカニズム。これこそが潜在意識開発の要である。本書のタイトルにもある「心のブレーキ」とはまさしく潜在意識のなせるブレーキである。人はなりたい自分になるために、最初の一歩を踏み出す。しかし二歩目、三歩目に進むのにどうしてもブレーキがかかってしまう。潜在意識の現状維持メカニズムによって、進むことから引き戻されてしまうのである。
ダイエットを例にとると、最初は一念発起して、運動や食事制限などでダイエットをスタートする。しかし間もなくすると、運動や食事制限をストップさせる働きが生じてしまう。人は「意志が弱い」とか「本気でない」という。それは決して意志が弱いわけでも、本気でないわけでもない。「潜在意識が、今の体重を維持しようとしているから(p.17)」なのである。「人生が思い通りに進まないのは、ほとんどの場合、この潜在意識の現状維持メカニズムが作用しているから(p.16)」なのである。
ではどうすれば、潜在意識の現状維持メカニズムに打ち克ち、人生を思い通りに進ませることができるのか。それは逆に現状維持メカニズムを利用することであり、そのためには「潜在意識を、新しい自分に徐々に慣らしていけばいい(p.20)」のである。だが、慣らしていくためには「最初の一歩にこそ、一番大きなエネルギーが必要(p.21)」であるため、結論としては「スタートは、繰り返して、できるだけ丁寧にゆっくりとやる(p.25)」ことが重要なのである。
本書は「理論書」ではない。列記とした「実用書」である。しかし理論書に勝るとも劣らず、潜在意識のことが実にわかりやすく、かつ詳しく書かれている。潜在意識を利用して願望実現するためには、まずは潜在意識のことをよく知る必要がある。よく知ったら、潜在意識の性質に逆らわずに「実践」すればいい。
本書は読書慣れしている人ならば、一時間もかからず読み終える分量である。しかし、潜在意識に関して「理論から実践まで」をここまで網羅的かつ効果的に述べられている本は類を見ない。また、本書にはもれなく石井氏の肉声によるレクチャーCDが付いてる。まさしく石井氏から直接コーチングを受けているかのような臨場感である。
本書に合わせて「ダメな自分を救う本」も読まれることをお薦めする。これで誰もが「潜在意識マスター」となり、思い通りの人生を歩む第一歩を踏めるであろう。
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