タイトルの通り、ここ数年、テレビに出てきた「霊能者」を取り巻く社会現象論及び批判。一つの章を割かれて批判されているのが、江原啓之氏と細木数子氏。前者は「スピリチュアル」という言葉を日本に広めた霊能者でありカウンセラー。後者は占い師。ともにテレビでの露出は多かった(現在はほとんどないが)。
まず江原氏に対しては多くの論者の意見を引用しながら、カウンセラーとして有能な資質を認め、江原氏がスピリチュアルブームを牽引した背景には、格差社会で結婚・出産もままらなない独身女性たちへの、強力な「救い」の可能性を指摘する。
細木氏に対しては、単なる占い師に先祖供養をミックスすることで、日本的宗教観に受け入れられやすい、新宗教的な側面を指摘している。
それらはいずれも「宗教」としての性格を持ちながらも、その「信者」達は必ずしも宗教的な実践への自覚がないことが特徴とされる。自分たちが実践しているのは、スピリチュアルであって宗教ではないと言う認識であろうか。
そもそも本書のテーマは「スピリチュアル」と「テレビ」であり、その二つは「カリスマ」という意味において極めて相性がいい。芸人であれ歌手であれ、テレビで活躍する人間はすでに「カリスマ」であり、スピリチュアルにおいてもその宗教性ゆえに「カリスマ」であるのだから。
しかもそれは、日本の宗教習俗の衰退にとって代わって出てきたメッセージであり、それ自体が宗教的ニーズを満たすものと言う。ただし、筆者が危惧するところは、テレビという極めて影響力のあるメディアで、ある意味、「正体不明」なスピリチュアル(霊や魂など)がさも実在するかのように報道されることで、視聴者の精神的な健全性(懐疑心など)を損なわれるのではないかということである。
ありきたりだが、やはり「メディアリテラシー」をしっかりと確立していくことが決めて重要であるという結論になろうか。
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