「ひらめき脳」茂木健一郎著

極めて示唆に富む一冊だった。

「ひらめき」のメカニズムを「脳科学」の観点から論理的に説明しており、よくわからない「直感」や「ひらめき」のようなものに再現性があることを理解することができた。

まず、「ひらめき」とは「ど忘れ」と同じメカニズムであると言う。それは言い換えると、脳に「空白」ができた状態。

脳の神経細胞とは非常に面白い性格を持つようで、意識の命令に従って動くものではなく、自発的に動いており、脳に空白ができると勝手にそれを埋めようと動き出すのだと言う。

その空白を埋める動きこそが「ひらめき」の元であり、著者は脳の空白こそが人生であると言う。脳に空白がある限り、人はいくらでも創造的いられるのであろう。

さらに人の創造力は「体験×意欲」で決まるといい、一般的に年を取れば取るほど意欲は低下すると言われるが、体験の絶対量は年長であるほど多い。と言うことは、意欲のある年寄りは最強と言うことになる。

例えばノーベル賞受賞者などは、まさに一瞬の「ひらめき」によってその研究が花開くわけだが、常に意欲と目的意識を持って研究をし続けなければならない。しかしそのような準備をすることで、突然の「ひらめき」がやってきて人生や世の中をひっくり返すこともある。

それをセレンディピティと言うのだが、偶然としか見えないようなセレンディピティでさえ、脳のメカニズムによって説明されるのである。そして大きな「ひらめき」が起こる環境とはリラックスであると付け加える。

要するに脳は割と自発的であって、ある程度の指令を下すだけで自然と考え答えを導いてくれるものらしい。主人たる意識はリラックスしておけばいい。

ただし、リラックスのためには緊張も必要であり、やはり普段からの努力(緊張)は大切なのである。ともあれ、「ひらめき」のメカニズムを知ることで、今よりももっと「脳」にお任せすることができ、それはそれで人生にもゆとりができるのではないだろうか。

そしてある時、脳はとてつもなく大きな仕事をすることがある。ロマンがあるではないか。

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