「ビル・エヴァンスについてのいくつかの事柄」中山康樹著

私が初めて買ったジャズのCDがビル・エヴァンスの「ポートレート・イン・ジャズ」である。

(同時にソニー・ロリンズ「サキソフォンコロッサス」とエリック・ドルフィー「ラスト・デイト」も購入)

とりあえず「ジャズ」という音楽が聴きたくて、まずはとっかかりにスタンダードの「枯葉」を目当てに買ったCDである。

ただ、その「枯葉」らしからぬ、あまりにもアグレッシブな演奏に驚いたと同時に、一気にビル・エヴァンスに魅了されてしまったのを昨日のように覚えている。

その「枯葉」において、ややアップテンポのテーマに続いて登場するのがベースとピアノのインタープレイ。

そのベーシストこそが夭折の天才ベーシスト、スコット・ラファロである。

エヴァンスの現役生活の中で、ラファロ以上のベーシストに出会うことは結局なかったと言われるが、そのあまりにも早すぎる死が、ラファロの伝説性を余計に高めている。

本書にはこんな逸話が紹介されていた。

ラファロの父親の葬儀の直後、姉に対して「ぼくは25歳で死ぬような気がするんだ」と語ったと言う。

ラファロの死後、エヴァンスはしばらくの間、まともにピアノを弾くことができなかったと言われているが、実はエヴァンスの人生はつねに「死」とリンクしていたことがわかる。

最愛のベーシストであるラファロの死をはじめとして、妻や兄の自殺、そしてエヴァンス自身。

エヴァンスのピアノはその代表作である「ワルツ・フォー・デビー」に見られるようなリリカルさが最大の魅力であり、そのエピゴーネンも実に多い。

しかし晩年の演奏になると、例えばバラードであるはずの「酒とバラの日々」などもアップテンポの激しい曲と化してしまい、それもどんどんとテンポが上がってくる。

まさに「死に急いでる」という表現がふさわしい。

そして周囲の入院を懇願する声を一切聞かず、最後の最後までピアノを弾き続け、まさに「長い自殺」を図り、最後は様々な合併症を悪化させて入院と同時に死んだ。

ビル・エヴァンスとはまさに「死」をピアノで語った詩人だったであろう。

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「ビル・エヴァンスについてのいくつかの事柄」中山康樹著 への2件のフィードバック

  1. ラナン のコメント:

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    ジャズを聴きたいなと知り合ったばかりの人に話したら、このCDをすすめられました。
    毎日、聴いてます。

  2. nobu のコメント:

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    PASS:
    僕が初めて買ったJAZZのCDはオスカーピーターソントリオでした。
    初めて(オオー)と思ったのはエヴァンスのワルツ・フォー・デビーでした。
    いまは部屋でソニークラークのクール・ストラッティンが流れています。

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