- 原題は「From Coach to Awakener(コーチから覚醒者へ)」となっており、ディルツ博士の真骨頂である「ニューロ・ロジカル・レベル」に基づいたコーチングの参考書。
「ニューロ・ロジカル・レベル」とは、人間の変化や学習のレベルを6つの段階に分け、上位レベルは必ず下位レベルに影響するように体系化されたNLPモデルのことであり、ディルツ博士が概念化したものである。
6つの段階とは、
1.環境(ガイディング)
2.行動(コーチング・狭義)
3.能力(ティーチング)
4.信念・価値観(メンタリング)
5.自己認識(スポンサリング)
6.スピリチュアル(アウェイクニング)
となり、望ましい変化をおこすには、各段階において適切な援助が必要となる。
本書では、それぞれのレベルにおける具体的なコーチング手法とその具体的なスキルが提供されている。
通常、よく知られている「コーチング」とは、クライアントの「行動」に焦点を絞ったものであり、本書で言う「行動(コーチング・狭義)」がまさにそれに当たる。
しかし、本書で取り扱うコーチングとは、それ以外のレベルをも含んだ広義の概念としてとらえている。
まず、「環境」のレベルでは、クライアントのガイド役として、望ましい環境整備を整えていく。野球の試合にたとえると、球場、ユニフォーム、道具をそろえるところからスタートする。
次に「行動」のレベルでは、クライアントのコーチとして、行動を観察し、望ましいパフォーマンスを発揮できるよう指導する。
野球でたとえると、バッティングやピッチングのコーチがそれにあたる。
「能力」のレベルでは、過去のパフォーマンスの改善よりも、むしろ新たな学習と能力の取得を目指すものとする。
野球で言えば、勝つために必要なより高いレベルでの理解を促すものである。
「信念・価値観」のレベルでは、まさにメンターとして、精神的な共鳴者として機能することになる。
野球で言えば、勝つための精神的原動力を育てることが、これにあたる。
「自己認識」のレベルでは、クライアントの全人格を認め、承認するスポンサーとしての役割が与えられる。
野球で言えば、選手ひとりひとりの能力や価値を最大限に認め、自ずと最高の力が発揮できるよう後見することである。
そして最後に「スピリチュアル」のレベルでは、クライアントが自らのミッションとビジョンにつながりながら、それ以外の人々に対する意識の目覚めを促します。
野球で言えば、チームの一体感、さらに人生への奥深い教訓として機能することになる。
このように広義のコーチングにおいて、まずは環境を整え準備をする段階から、自分を超えた存在との一体感やミッションにつながる段階に至るまで、その理論や背景から、「道具箱」としての具体的なスキル・ノウハウにまで、実に丁寧に解説されている。
NLPに対する基本的な知識のない初学者や、プラクティショナーレベルにある人にとっては、若干とっつきにくい感じもあるが、本書はまさにNLPの目的である「目標達成」「問題解決」「人生の変化」を確実にもたらすための格好のバイブルと言えよう。
もちろん私自身にとってもバイブルであり、常に手の届く位置にある一冊である。