「弱者の戦略」栢野克己著

 著者は福岡在住で個人零細企業向けコンサルタントを営んでいる。私も何度か事務所にお邪魔したことがあるし、セミナーなどでもしばしば顔を合わせることがある。「弱者の戦略」とはいわゆる大企業大手など「強者」に対して、個人零細企業など「弱者」がいかにして勝ちあがっていくかの手法のこと。

 しかしそれは何も特別なことではなく、最初はどんな大企業も「弱者」からスタートし、そこから勝ち上がってくために必然的に取らざるをえない戦略のことであり、著者はそれを経営の「原理原則」と呼んでいる。専門的には「ランチェスター経営」などと言われることもあるが、本書は経営学的な小難しさを一切排した、読み物としても楽しめる一冊となっている。

 「弱者の戦略」とは、別の言い方をすれば、「強者(大企業大手)」がやらない戦略のこと。さらに言えば、個人零細企業が「強者」のやり方でやっても勝てる見込みはない。これを実際の「うどん屋」の例をとって解説してある。

 失敗例の特徴は大量生産、特定ターゲットなし、不特定への営業など。体力のある大企業であれば、数にモノを言わせて広げていくことも可能であろう。しかし、それと同じことを個人零細企業がやっても限界がある。

 では、「弱者の戦略」とは何か。一言で言うと「一点突破」である。商品を絞り(差別化し)、地域を限定し、客層も広げず、営業は顔見せ第一、など。つまりここにしかない、ここでしかできないことに集中してやっていくしかないのである。実は旅行会社のHIS、コンビニのセブンイレブン、コーヒーのタリーズなども、最初は「一点突破」で勝ち進んでいったのである。

 
 そのような「弱者の戦略」、つまり経営の原理原則に触れた後、後半では著者一流の人生・経営哲学に言及される。それを著者は「夢・戦・感(夢・戦略・感謝)」と呼ぶ。

大事なのは、資本主義社会で生きていくためには、「夢×戦略×感謝」の全部が必要だということ。夢だけでは食えぬ。戦略(+戦術)だけでは疲弊する。感謝だけではカモにされる。「夢×戦×感」のバランスが大事なのだ。(88頁)

 共感する。これぞまさに人生の原理原則ではないだろうか。また、終盤では著者のヘタレな生い立ちが紹介される。借金、うつ、包茎(の話は本書にはないがブログにはある・・・)。著者が今現在、どの程度の成功度合か比べようもないが、少なくとも、失敗度合でも著者はかなりキテいる。読んでて笑える。だからいい。だから全国にファンがいる。

 ちなみに私自身も著者とかぶさるところは少なくない。ニート、ワーキングプア、ブログ、講演活動、世界一周、福岡在住など。人は誰もが弱者である。あの強者も弱者からスタート。その弱者が最初に何をやるべきか。本書には参考になる記述も多いであろう。

 ちなみにブログは過激で面白い。知る人ぞ知るJAL事件をはじめ、常識的にはちょっと言いにくいことをズバズバ言ってのける口調には溜飲が下る。しかし敵にはまわしたくない。

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