著者にとって2冊目となるが、一冊目の「NLPの基本がわかる本」がどちらかと言うとコミュニケーションに力点を置いたものであったのに対して、本書は「願望実現」に力点が置かれている。
NLP創設者の一人であるジョン・グリンダー博士は「願望実現なくして、NLPの意味はない」と述べている通り、NLPはコミュニケーションにおいて非常に有効であると同時に、願望実現に対しても最強のツールである。
ここ数年、日本でもNLP関係の本がたくさん出版されているが、そのほとんどがNLPのスキルやケースの紹介に留まり、NLPを根本的に理解するものではなかったと思われる。その意味で、著者の一冊目は画期的であり、「脳の3つの原則」など、著者独自のタームを盛り込みながら、NLPの本質に深く迫る一冊であった。
実は私が最初にNLPを学んだところは、出版されている本のほとんどがスキルやケースの羅列に留まり、本質的な理解を促すものではなかった。セミナーに出たところで、「体験することに意味がある」「10日間通せば自然と身につく」みたいな言葉でお茶を濁されていたように思うが、実際に著者の山崎氏のセミナーを受けて、初めてNLPのことが少し理解できたように思いう。
しかし、本書を読んでまず驚いたのが、スキルの紹介が一つくらいしか紹介されていないこと。それが「チェインプロセス」というスキル。NLPには基本スキルとして70程度の、その組み合わせを合わせると数百に及ぶスキルがあると言われているが、もしも本当に変化を起こしたいのであれば、実は2~3で十分かもしれない。
その一つが本書で紹介されている「チェインプロセス」であり、それはリアルに「願望」を「実現」する最強のツールであろう。しかし、なぜ「チェインプロセス」が効果的なのか、それを知ってワークするのと、知らないでするのとでは、効果に雲泥の差が生じる。その「なぜ」を腹の底まで理解させるために、紙面の大半が割かれている。
そのようなNLPや願望実現の本質理解、そして具体的に願望を実現する方法論についても、本書は秀でたものがあるが、行間を読めば、より深い世界を垣間見ることもできる。そして「NLPの基本がわかる本」は、まさしくNLPの解説書であったのだが、「願いがかなうNLP」は「人間・山崎啓支」を知る一冊でもあろう。
山崎氏のサラリーマン時代は、半端ないくらいの「ダメ社員」だったとか。今でこそ日本を代表するNLPトレーナーであるが、その「ダメ社員」時代は本当にダメだったとのこと。本書にも書いている通り、営業成績が上がらないなんてものではなく、他の社員が取ってきた仕事までつぶしてしまうという、ゼロではなくマイナスの成績だったとか。そもそも「マイナスの成績」など、取ろうと思ってもなかなか取れないもの。しまいには経費の精算もできなくなってしまう。
しかしそのダメ社員・山崎啓支も「ある出来事」によって数時間のうちに「トップセールスパーソン」に変化する。そのエピソードは終盤で語られるが、涙なしに読むことはできない。人間が本当に変化するとはこう言うことなんだろう。まったくできない奴が瞬時にしてできるようになる。その秘訣がここにある、と言うか、本当の意味で変わるには実際にはそれしかないのだ。
本書はいわゆる「願望実現」をテーマとした本の中では最高峰だと感じるが、本当に大切なことまでは必ずしも言語化されているとは限らない。しかし実際は、それを言語化することは野暮なことなのかもしれず、それは本書で描かれる「人間・山崎啓支」から、それぞれの読者が感じ取ってもらえばいいだけのこと。そんな本だと感じる。
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