「佐賀のがばいばあちゃん」島田洋七著

 勇気が出る人生哲学の詰まった本。

 もう説明の必要もないだろう。貧乏をしても明るさと誇りだけは失わず、前向きに生きていく女性とその孫の話。

 鉄くずを拾うために、磁石を引きずって歩き、川上から流れてくる捨てられた野菜を集める。

 いかにも貧乏くさいのだが、それが哀れさを誘わないのは、二人の生きる姿勢によるのだろう。

 がばいばあちゃんにの貧乏には2種類ある。それは「明るい貧乏」と「暗い貧乏」。二人はまさしく「明るい貧乏」なのである。

 著者の島田洋七はB&Bという漫才コンビで一世風靡したことがある。

 主に相手の出身地をけなして笑いを取るネタだが、「もみじまんじゅう」と言って、面白おかしくけなしまくるのが立派な笑いになる原点は「がばいばあちゃん」の視点にあったのでは、と改めて認識される。

 すべてを笑いに転換する。その実、「がばいばあちゃん」の生き方は「漫才」のネタそのものであるから。

 本書には笑いだけでなく、泣かせる場面も少なくない。

 とりわけ終盤の、修学旅行に行けない同級生のためにカンパする話はハンカチなしでは読めない。

 洋七は中学で野球部の主将であった。3年生になると楽しみな修学旅行が待っているのだが、部員の一人が母親の医療費のために行けないと言う。

 それを部員みんなでアルバイトをしてカンパするのだが、その同級生はお金を受け取っておきながら結局行かないのである。

 憤慨して詰め寄る部員はその同級生の心を知る。何と後輩のために野球道具を買っていたのである。

 洋七ら部員はその場で土下座しながら、がばいばあちゃんの言葉を思い出す。

「本当の優しさとは、相手に気づかれずにすること」

 特別付録のがばいばあちゃん語録は見事な「リフレーミング集」である。私のお気に入りは

・嫌われているということは、目立っているということや。

・ケチは最低!節約は天才!

・「暑い」「寒い」と、うるさく言うな。夏は冬に感謝し、冬は夏に感謝しんしゃい。

・海水パンツなんかいらん!実力で泳げ!!

・人間は死ぬまで夢をもて!その夢が叶わなくても、しょせん夢だから。

素晴らしい哲学である。

佐賀のがばいばあちゃん (徳間文庫)/島田 洋七
¥540
Amazon.co.jp


カテゴリー: |―人生哲学 パーマリンク