【書評】「人生が楽になる 超シンプルなさとり方」エックハルト・トール著

日本では「ニュー・アース」で有名なエッククハルト・トール氏であるが、多くの人から薦められながら、今までなかなか読めないでいた。理由は、読んでるとどんどん眠くなるから。図書館にあった「ニュー・アース」も最初の2ページで挫折し、本書についても、かなり前に購入していながら、書評をするきっかけにようやく読了した。
内容としては、多くの類書とほとんど変わらず、どちらが先かはともかく、オショウ(バグワン・シュリ・ラジニーシ)などの書物と言ってることは同じである。ようするに過去も未来も幻想であり、あらゆる悩みから解放され、本当の自分を生きるには、「今」に生きよと指南するのみ。もちろんそのメッセージ自体は「真実」であるだけに、代わり映えしなくて当然であろう。その意味で、読んでいて刺激を受けるわけでもなく、当たり前のことをただおさらいするだけであった。
しかし、多くの人にとっては、「今」に生きることの真実性を頭で理解したところで、言われてすぐにできることじゃないもどかしさがあろう。方法論としては「瞑想」が勧められるのであろうが、それもやはり鍛錬が必要であり、すぐに体験できることでもない。
しかし、本書は「今(パワー・オブ・ナウ)」に至るためのシンプルな「実践編」との位置づけであるだけに、なるほど確かに簡単で効果的。そのキーワードは「観察」である。それも極めて「意識」的な観察を重視せよと言う。
私自身はしばしば「悟り」を二種類に分けて説明することがある。一つ目が「無意識的な悟り」であり、もう一つが「意識的な悟り」である。実は前者の「無意識的な悟り」については、私たちは例外なくそれを経験している。赤ん坊の時代がそう。その時期は言語表出ができないため、「思考」による幻想を生み出すことは物理的に不可能であるからだ。その観点から言えば、私たちも今すぐにでも「無意識的な悟り」を経験することはできる。単純に前頭前野にメスを入れて破壊すれば、過去や未来に対する思考がすべて消えうせ、「今」に完璧に生きることができるからだ。
当然、それを望む人は普通はいないであろう。もっとも、ジルボルト・テイラー女史のように、事故で言語野を破壊されてからも、それを治療することで「無意識的な悟り」を意識化することは不可能ではない。しかし、それは再現することは大きなリスクがある。
本書において、そして一般的な意味においても、目指すべきは「意識的な悟り」である。つまり、自分が悟っていることを悟っている状態のこと。著者が一貫して主張していることが「無意識に生きるな」ということ。恐れも不安も憂いも嫉妬も、ネガティブな感情はすべて無意識に襲われるもの。それを「意識化」することが、「今」に生きるための条件であり、その準備がまさに「観察」することである。
不安に襲われたら、それをただ自然に「観察」し、そこに判断を挟まないこと。病気や身体的な痛みについても、ただ、身体を「観察」するのみ。何らかの感情的な痛み(ペインボディ)は、無意識に「私は不幸な人」とのアイデンティティ(一般化)に結びつき、それにより痛みに支配されるのである。そうなる前に、あらゆる痛みに対してもただ「観察」し、一切の判断をしないこと。これが「悟り」のための準備である。
なるほど、本としては面白味はなかったが、実践法としては確かにシンプルであり、誰もがその準備を踏める点で良書と言えよう。
人生が楽になる 超シンプルなさとり方 (5次元文庫)/エックハルト・トール

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【書評】「人生が楽になる 超シンプルなさとり方」エックハルト・トール著 への1件のフィードバック

  1. あさもん のコメント:

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    このところ書評なされていましたが、私は本を読む事が出来ません。本を読んでも考えている時間が長く本の内容がまるで頭に入らないので、大変助かりました。
    拝見していたブログの開設者が編集に携わったという「さとりをひらくと人生はシンプルで楽になる〈ThePowerofNOW〉」を昨年開いて活字は見たのですが、精神病が発現してしまい、日常社会生活が破たんしてしまいました。
    わたくしには向いていないジャンルの本なのかもしれません。
    自分でも不可解なのですが、いまここや悟り、真我、といったキーワードや引き寄せやヘミシンク、瞑想といった活動に堪えがたい苦痛を感じるのですが、なぜか近づいてしまい気がおかしくなってきて、いよいよ今は精神病で病欠をしている有様です。(低年収から無収入になりました。)
    そういう病気なのかもしれませんので、病気のことは専門家に見て頂くこととしまして、誰かが読んだ感想を読んだり、評判を聞くことしか堪えられない思考回路の様です。
    ですので最近書評が多かったことは、とてもよかったです。
    ありがとうございました。

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