■ジントニックの謎

こんにちは、行動強化コンサルタントの石田久二です。

私は20代後半の一時期、カクテルにハマった時がありました。家の近所にジャズのレコードを聴かせる店があり、ふらっと立ち寄ったところ、その店のマスターはジャズにはあまり詳しくなく、何千万円もの費用をかけてシステムを強化する、つまりオーディオマニアの類でした。

ですので、レコードも有名どころばかりが100枚程度あるのみ。しかし、それだけシステムに凝ってるので、音はそれはもう素晴らしいものでした。そのマスターはもともと凝り性なのか、料理やカクテル、コーヒーもかなりのもの。私が初めて店に入って「ビールを」と注文すると、「カクテルの方がいいですよ」と頭ごなしに否定。

私としてはジャズが聴きたかっただけだし、そんな風に言われるのも珍しく、素直にお任せのカクテルを注文。その時、何を飲んだのか覚えていないのですが、めちゃくちゃ美味しかったのです。それから、その店には週の半分は通い、カクテルやウイスキーを楽しんだものです。私が「酒の味」を覚えた原体験と言えるのでしょうか。

その後、引越したことでその店からは遠ざかったのですが、バーでカクテルを開拓する日々はしばらく続きました。そして行きついた先が福岡市博多区中洲の「ニッカーバー七島」です。その店は高級感漂うわけではありませんが、中洲にありながらテーブルチャージを取らない良心的な店。純粋に酒を飲ませる店です。

とにかくその店のカクテルが最高。オーナーは世界的なバーテンダーであり、そこから数々の優秀なバーテンダーが育っていると聞きます。ある日、知人をその店に連れて行った時のこと。一応、「美味しいカクテルを飲ませる」とは事前に伝えてはいたものの、そこまで大きな期待があったわけではなさそう。とりあえず、「ジントニック」を注文したのですが、一口した時のリアクション。

「何これ?ウマい!」

何の変哲もないジントニックが、唸らせるほど美味いのです。私はその店ではいきなり「ドラマティーに」を注文するのですが、至福の瞬間を味わえます。確かにマティーニのようなショートカクテルならば技術が重要そうな気もしますが、ジントニックなどは、単にジンとトニックウォーターを混ぜただけ。ジンも普通にリカーショップに売ってる、ビフィーターかボンベイサファイヤなど。

カクテルブックに載ってる分量通りに混ぜれば、それなりのものができるのでしょうが、美味い店はなぜにあんなに美味いのでしょうか。ただ混ぜるだけなのに、バーテンダーは何をどうやってるのでしょうか。居酒屋のカクテルとまったく味が違うのはなぜなのか。まさにジントニックの謎です。

月並みな分析になりますが、やっぱり「細部」が違うのでしょう。素人にはわからないわずかな技術の差、つまり細部。同じ材料と分量でも「何か」が違う。

そこで重要なことが一つあります。それは、私のような素人であっても、「細部」は伝わること。これはおそらくすべての仕事に当てはまるのでしょう。私はセミナー業をやっていますが、コンテンツやしゃべり方は当然のこと、例えばイスの配置、数、マイクの音量、部屋の明るさ、資料の並べ方、その他諸々、コンテンツに直接関係ないような、全体の中の「細部」がとても重要で、そこが「一流」とそれ以外の違いを分けるのでしょう。

「神は細部に宿る」とはよく言うもので、お客さんは確かに頭ではわからないこと。だけど、どんなお客さんでも「何となく」のレベルではしっかりキャッチしている。その「何となく」を左右するのが「細部」であり、それこそが一流を決定づけるのでしょう。美味いジントニックを飲みながら、そんなことを思ったりしました。


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■ジントニックの謎 への1件のフィードバック

  1. Rika☆彡 のコメント:

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    「宇宙となかよし」も毎日読んでますが、こちらのブログもこの頃、沢山更新されていて、とても嬉しいです。
    いつも「うん。うん。」とか「そんなんだぁ~。」と想いながら、読んでます。
    いつもありがとうございます。楽しみにしてます。

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