話し方指導一筋35年、口コミだけで広がる「話し方セミナー」のプロが教える「実践的話し方」の手引書。人生の成功の秘訣は話し方、「人の心をつかむ話し方」にあると力説する。その話し方のノウハウを極めて具体的、実践的に指南している良書である。
なぜ「話し方」が重要なのか。第一に仕事や社交の場において、相手にきちんと正確に物事を伝えられるか否かの一つの評価軸となるから。そして「人に認められたい」という生来の自己認識欲求を満たすのに「話し方」がネックになるからだと言う。そして「話し方」は一つのビジネススキルであり、誰でもコツを習得し、場数を踏むことで高めることができ、それによってビジネスシーンや人生において圧倒的な優位性を誇ることができるものなのである。
話し方の基本原則は「態度・表情・声」といった外見的部分、「内容」という内面的部分にわけられる。有名な「メラビアンの法則」によると人に伝わる印象の93%は「態度・表情・声」にあり、それを改善させる法則が「あいうえの法則」。つまり「あ:アイコンタクト、い:衣服、う:動き、え:笑顔、お:大声」のこと。一方、「内容」については「かきくけこの法則」が適用される。つまり「か:簡単明瞭、き:起承転結、く:具体的、け:結論、こ:言葉の気配り」のこと。この二種類の法則に気をつけることで「話し方」の全体が大幅に改善される。まさしく簡単明瞭に話し方のノウハウがまとめられてあり、35年一筋のキャリアは伊達じゃないと唸らせるものがある。
「自己紹介」も話し方の大切な要素だ。自己紹介によってその人物のほとんどすべてが測られると言っても過言ではない。そこでも「じ・こ・し・ょ・う・か・いの法則」として「態度・表情・声」、「内容」の両面からポイントを指摘する。そして本書の要である「2分間で話す」ことの重要性とそのスキルが紹介されていく。聞き手に話を伝えるためには「時間」も重要な要素。通常は3分から5分程度は必要であろうが、ここでは「2分間」を一つのルールとして、「2分間」に徹底的にこだわりながら相手を強烈に印象付ける「話し方」の核に迫っていく。世紀の名演説、リンカーン第16代米大統領による「人民の、人民による、人民のための・・」で知られる「ゲティスバーク演説」も2分間であり、その2分間で民衆の心を鮮烈につかんだエピソードを紹介する。
本書で述べられていることでないが、ニクソン元米大統領の言葉を思い出した。それは、
「5分間のスピーチには、一週間の準備期間がほしい。10分なら、一日考えさせてくれ。 一時間のスピーチ? 今すぐにやってあげよう。」
というもの。ここでは「5分間」であるが、短時間のスピーチの重要性を物語っていることを付け加えたい。
そして「話し方」のコツがわかったら、日々の習慣、そしてなにより「場数」を踏むことによって、実際的にスキルを高めていくことが要求される。本書では「2分間」で話を伝え、説得する術の紹介に全体の70%もの紙面が割かれている。詳しくは本書に譲りたい。また、本書には実際の「話し方セミナー」における「良き手本」が収録された話し方サンプルCDが付いている。文字だけではわかりにくい「話し方」の実践を、実際に耳で聞くことによって、さらに理解が深められるであろう。著者の主催する「コトハナセミナー」にも一度参加してみたいものだ。
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