「ガラクタ捨てれば自分が見える」カレン・キングストン著

 真に恐ろしい本である。およそ20ページほど読み進めた時点で、もう居ても立ってもいられなくなる。家の中にあるガラクタというガラクタを全て処分しなければ気が済まなくなる。そして家の中には如何に多くのガラクタがあるのか再確認させられるであろう。私は読み進めて10分程で、やおら立ち上がり、クローゼットを全開にし、本棚を引き摺り下ろし「片付け」を始めた。いつもなら週に1つ出ればよいゴミ袋が、ものの数時間で5袋になった。そう、本書には「片付け」のための強烈なインセンティブが染み込まれている。

 著者であるカレン・キングストン女史は、「風水」の世界的権威であり、イギリス人でありながら、年の半分をバリ島で暮らしている。本書は風水の「不要なガラクタを整理する」の部分にフォーカスした、風水の良好な入門書とも言える。

 著者は「ガラクタ」を「エネルギーの渋滞」と定義する。道にタバコを投げ捨てると、瞬く間にそこは「ゴミ捨て場」の如しになる例で分かるとおり、ガラクタは別のガラクタを呼び込み、結果としてエネルギーの強烈なストッパーとなってしまう。つまり部屋にガラクタがあることは、エネルギーの停滞の原因となり、新鮮なエネルギーが入ってこないことを意味する。

 そうなると人にとってどのような結果を引き起こすのか。著者によると「疲労感を覚え無気力になる」「過去の呪縛を溜め込む」「体の動きを滞らせる」「肥満体質になる」「混乱の元になる」「人間関係が悪くなる」「何事も延期がちになる」「不調和になる」「自分を恥じるようになる」「人生の展開が遅くなる」「鬱になる」「超過荷物になる」「感性が鈍る」「健康が悪くなる」。。。これでもかとばかりに、ガラクタの害悪を列挙している。しかし、いずれも「わかる」、納得させられる。例えば私の元同僚に絶対に片付けられない女性社員がいたが、明らかに「デブ」で「ブス」で「無能」であった(その割りにプライドは高かった)。

 本書は単に「ガラクタ」の害悪を説くだけでなく、「スペースクリアリング」という考えにより、実際の「片付け」の手順を指南してくれる。さらに「ガラクタ」は物理的なものから、身体、心、感情、魂のレベルにまで言及し、その対処方法を見事に示してくれる。

 この本を手にとって24時間以内に行動を起こせない人に未来はないであろう。逆に未来ある人は、森の中にいるような安らぎの空間と翌日の爽やかな目覚めを経験するであろう。

 本書は500円程度の文庫本であるが、内容は人によっては1000万円の価値を見出すかもしれない。真の実用書として久々のヒットである。

ガラクタ捨てれば自分が見える―風水整理術入門 (小学館文庫)/カレン・キングストン
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