野球漫画の古典的名作である、ちばあきお氏の著による「キャプテン」を紹介する。何でこれがスピリチュアルブック?、と思われるかもしれないが、実家に帰ったときに久々に全巻を読み直すと、非常に感動的であり、さらに多分にスピリチュアルな要素を発見したので、ここに紹介したくなったのである。
ご存知の方はご存知であろうが、「キャプテン」は全ストーリーの中で主人公として4代のキャプテンが登場する。中でもこの「キャプテン」の最もキャプテンらしき主人公が、一代目キャプテンである谷口タカオである(谷口をキャプテンに指名した全キャプテンも男だが、名前が出てこない)。
なぜこれがスピリチュアルなのかというと、野球漫画にありがちな変な魔球やラブストーリー、非凡なキャラクター設定などが全くなく、普通の野球部員が淡々と頑張っていき、弱小野球部が全国大会にまでのし上がっていく様に、現在では見られない深い精神性を感じたからである。つまり、「誰でも人一倍頑張れば夢はかなえられる」ということを、漫画的な無茶なストーリーを設定せずに、じわじわと読者の心に届かせるところに、深い精神性がある。
一代目キャプテンの谷口タカオは、登場してきたときは下手っぴ~の野球部員である。舞台となる墨谷二中に転向する前は名門青葉中学にいたことが、墨谷ナインの誤解を招くことになる。実際には青葉の2軍の補欠であったのだが、しかし、谷口はその誤解から逃げることなく、帰宅後も神社での陰の猛特訓によって、実際の青葉中学のレギュラーに勝るとも劣らない実力を身につけ、最後には谷口率いる墨谷2中は青葉中学を破るのである。ちなみに「神社」での練習というのがかなりスピリチュアルで、おそらく波動の高い神社故に本来の練習内容以上の成果を見に付けたというのは本編のどこにも書いていない。単なるこじ付けである。
さらに全シリーズを通して言えるのだが、墨谷ナインは必要以上に「傷つき過ぎ」である。試合中に爪をはがしたり、指の骨を折ったり、ボロボロにまで疲れ果てたり(特にイガラシ)、これでもかとばかりに身体を酷使しながら、試合を展開させる。これはまさしく「行」である。身体を極限にまで追い込むことで、眠っている細胞・遺伝子を活性化させ、ナイン全員が次回の試合までのとんでもなく成長するのである。こんなことも本編には書かれておらず、単なる深読みである。
ともあれ、「キャプテン」を通して見られる、「ガンバリズム(谷口イズム)」は現代の学校現場ではおよそ見られない姿である(中学生の根性以前に保護者やPTAがうるさい)。「ゆとり教育」で甘やかされてきた現代の生徒たちに、いかに反復練習が大切か、そして「頑張る」ことが尊いかを学ばせることのできる、教科書以上の教科書である。現代の推薦図書として全中学校の図書館に置くべきである。
余談であるが、「キャプテン」そしてその続編となる「プレイボール」には、たい焼きやそば(実際はラーメン)、手作りのカレー、メザシなどの超B級グルメが頻出する。たい焼きの焼き具合などのディティールもスクリーントーンを使ってないだけに、恐ろしく旨そうに見えるのである。非常に精神性の高い表現と言える。
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