「ジャズマンがコッソリ愛するJAZZ隠れ名盤100」小川 隆夫著

先ごろ休刊した「スイングジャーナル」誌上で連載されていた「ブラインドフォールドテスト」を編集し直したもので、楽しい企画であっただけに興味深く読ませてもらった。
「ブラインドフォールドテスト」と言うのは、レコードだけ聞かせて「誰」の演奏かを当てるテスト。テストされる側はすべて現役のミュージシャンであり、それもジャズ界では名だたる名手・巨匠に限られている。つまり「同業者」のレコードを聞かせ、それを当てさせながら、いろんな話を引き出そうという企画である。
とにかく面白かった。さすがに一流のプロだけに、知らないアルバムであっても、誰の演奏かはほぼ当てている。インタビューの小川氏はなかなかのチョイスで迫り、もちろん相性のいいミュージシャン、共演したミュージシャンのアルバムを持ちだすこともあるが、どう考えてもミスマッチなアルバムもちらほら。
例えばスコット・ハミルトンにアルバート・アイラーのアルバムを聴かせるあたり、いかにも無謀なチョイスと思われがちだが、リップサービスもあれど、意外と反応が悪くないのは驚きだった。もちろん一発で当てた。特にアイラーの中から独特の「スイング感」を聴きとる辺り、さすがは本物と言ったところだろうか。
また、ミュージシャン同士のほほえましい関係、意外な関係なども読むことができ、興味が尽きない。デクスター・ゴードンとジョニー・グリフィンは大の仲良し、デックスが酔っぱらった時、ワーデル・グレイは家まで送っていたなど。
あと、日本では「愛すべきB級テナー」としてそこそこの人気はあるが、アメリカではほとんど評価されていないされるハンク・モブレーは、同業のミュージシャンからはかなり念入りに聴かれていたという事実。そうでなければブルーノートからあれほどのアルバムを出さなかっただろうし、この辺はアメリカのマーケットとリスナーの耳の落差を感じるところだ。その点で言うと、日本のリスナーはジャズに関しては、かなり「いい耳」を持っていると言うことになろうか。
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