大学で教鞭をとる心理学博士でありプロの「拝み屋」でもある著書がいわゆる「現世利得」に結びつく「祈り」について答えている。
特定の宗教色や極端な精神世界への偏重もなく、質問者の問いに単純に答えているだけであるが、作られたスピリチュアルブームとは一線を画する、非常に地に足ついた見解が続いている。
本書は著者自らが体系立てて書き下ろしたものでもなく、次々と質問に答えているだけに、知りたいことが知りたいだけ知ることができる構成となっている。
まずは目次に目を通して、興味のある個所から読んでもいいだろう。
たとえば「本当の霊障は100人中一人から二人」の項目では、ブームに踊る人たちを啓蒙するのに適切な見解がなされている。「拝み屋」に駆け込んで来る人のほとんどが自分で解決できる問題だと言う。
また「開運のための祈祷の手順」の項目については、もちろん科学的とは言い切れないものの、昔から馴染みにある「神様」を排除すべきでなことを説く。
それ以外にも「呪詛について」「祈祷の適正価格」「生霊と撮り憑かれている人の特徴」「お墓参りの意味」など興味深い話題が続く。
そしていよいよ「現世利得」を満たすための具体的な手順について説明される。その一つが「願かけ」。その手順が、
ポイント1:日数を決める(7日、21日、35日、100日)
ポイント2:神棚に毎日手を合わせる
ポイント3:結果が出たら必ずお礼参りする
とうことである。ここでは特に日数を決めたところで、途中で必ず「魔が差す」ことが訪れることを指摘する。
仕事だったり、遊びだったり。しかし途中でやめてしまってはまた最初からやり直し。習慣化のプロセスとまったく同じだ。
結局のところ、「祈り」がテーマでもあっても、世に溢れる成功哲学や自己啓発と取り立てて変わるところはない。
しかし、その行動を「祈り」に向けるところに面白さがあるし、忘れていた何かに気付かされるところがある。
スピリチュアルに関心がある人でないと、手に取りにくいテーマかもしれないが、日ごろ、ビジネス書や自己啓発書を読んでいる人は腑に落ちる部分も多いだろう。
つまりは「まっとう」なのである。
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