「相手を洗脳する文章テクニック」宮川明著

 心理学と言語学を足して二で割ったような、、、としばしば説明されるNLP(神経言語プログラム)を「文章」に生かせばどうなるか、という趣旨の一冊。

 インターネットマーケッターとして成功している宮川明氏がその「手の内」を明かすと言えば、非常に説得力が出てくるであろう。

 ただ、売れているセールスレターやコピーには、おのずとNLPのエッセンスが含まれており、ある意味、NLPを用いた文章テクニックと言うより、売れるための文章テクニックをNLP的に解説した、と言った方がより正確かもしれない。

 例えば「今すぐ契約しようとは思わないでください」のような否定命令文は、知る人ぞ知るH氏によるコピーライティングなどで有名だが、それは必ずしもNLPを知ってて書いたとは思えない。

 おそらく自然に出てきた言い方であろう。しかしながら、NLPが「成功者のモデリング」の技法であるとすると、いわゆる成功技法はほとんどNLPで解説できるとも言える。

 その点で成功する文章の書き方を、NLPと言う理論的ベースによって解説できるのは当然といえよう。

 ただし、それを正面からやった著書はなかったと思うので、文章を仕事とする人間にとっては、バイブルとなる一冊かもしれない。

 NLPをある程度知っている人間にとっては、特に目新し記述もなく、しかし、重要なことはほとんど網羅されているので、NLP入門者にとっては良質な教科書と言ってもいい。

 NLPもそうだが、自己啓発系の本にはしばしば「潜在意識」を使ったという表現が散見されるが、その多くは具体的な記述もなくわかりにくものばかいであった(またはあまりに具体的過ぎて逆にわらかない)。

 その点で、本書はいわゆる「潜在意識」に入り込む文章と、そうでない文章の違いがよくわかり、それは文章だけでなく、コミュニケーション全般でも生かせる内容である。

 

 特にわかりやすかったのが、「潜在意識」にうったえる文章は人間を「内面」に向かわせるというところ。

 人間の意識は常に「内面」か「外面」かのいずれかを向いている。そして人をトランスに導き、「潜在意識」のままにメッセージを送りこむには、意識を「内面」に向かわせる必要がある。

 そのためには、そのための「文章」や「言葉」があり、その方法論を一つ一つ解説しているのは、とても親切だと感じた。むしろやり過ぎの面もあるが、それは読者にとってありがたい側面であろう。

 本書はNLPを用いた文章テクニックとして、文章を仕事としている人はもちろん、NLPの初学者にとっても適切な解説書であり、著者の小まめさがよく出ている良書であると言えよう。

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