およそ10年ほど前に読んだきりで、久々に読んでみた。
主人公が35歳であることに驚く。
私と同じ年齢。主人公は重度のアル中でγGDP1300という恐るべし数値の持ち主。肝硬変か肝臓癌で顔中を黄だんだらけにした状態で入院。
言うまでもなく、本書は著者である「中島らも」の自伝的フィクションである(と思う)。
らも氏は現に若い頃からアルコールや薬漬けの生活を送っており、それ以外でもかなり破滅的な毎日を送っていたそうだ。そして50代半ばの若さで亡くなっている。
脳挫傷が直接の原因だが、日常的にラリッていたことは想像に難くない。
物語は一人の若者がアル中から立ち直る様子を、病室での出来事、人間模様を舞台に描かれている。
いわゆる「アル中闘病記」であるが、らも氏の筆にかかると、決して重苦しくなく、さりとてノリの良いタッチというわけでもなく、なんとなく何も考えずに書いてます的な雰囲気が漂っている。
酒に溺れて破滅的な毎日を送っている割には、いわゆる医学的な知識も半端ではなく、小説タッチのドキュメンタリーとしても読める。
もちろん、らも氏の文章だからこそ読めるのだが。
一応、35歳の同い年の物語として読もうと思ったが、晩年のらも氏の姿がチラついて、決してそんな風には読めない。(今現在は37歳です)
ただ、それは「今の35歳」と比べるからであって、時代的な要素を鑑みると、古き良き時代、無茶をしても大目にみられるような、大らかな時代背景が感じられる。
終盤では、一応、アル中から立ち直った主人公が恋人とバーで「ミルク」で乾杯をするのだが、「それはないやろ」的なクサイ台詞で場を盛り上げる。確かにその台詞は、ない。。。
読了後は妙にすがすがしい。
- 今夜、すベてのバ-で (講談社文庫)/中島 らも
- ¥560
- Amazon.co.jp