「『売れる営業』の話し方」ケビン・ホーガン著

 セールスやコミュニケーションに関する書籍は、毎日のように類書が濫造されている。

 もちろん玉石混合ではあるが、それだけ顕在的・潜在的ニーズの高い分野であるとも言える。

 本書は「その見逃せない心理術」とサブタイトルにあるように、「営業の心理学」の本であり、多くはNLP(神経言語プログラム)などで説明されるビジネス心理学がベースとなっている。

 それを本書ではMAP(マインド・アクセス・ポイント)という概念を持ち出し、いかにしてセールスを有利に進めることができるかを、無意識、非言語的レベルで解説する。

 それは著者が断言するように「営業が成立しているのは無意識のレベルにおいて」であることが前提となっている。

 まずは多くのセールスノウハウ本でも紹介されている「ラポール」について。

 それを本書では7段階で説明する。順番に「相手への関心」「ミラーリング」「マッチング」「話し方のペーシング」「話し方のマッチング(VAKに基づく)」「呼吸のペーシング」「姿勢やポーズを合わせる」である。

 それができたら、今度は「リーディング」によって、相手を自分のペースに引き込む。

 それでセールスのベースが完成する。

 次に人間の「欲求」に着目した会話術を説明する。

 その欲求とは4つの基本形、すなわち「食」「危険回避」「危険への抵抗」「セックス・複製」と、そこから派生する16パターンから成立している。

 そしてその欲求度に応じた刺激的な(MAP的な)会話例が紹介される。

 読むだけでも非常に実践的である。

 その他の章も「アンカー」「感覚系(VAK)」「メタモデル」とそのまんまNLPである。

 それをセールス、交渉術に実践的に昇華しているため、時として観念的になりがちなNLPのスキルの活かし方を知ることができる。

 また、非言語的コミュニケーションの極みとも言える「身体の動き」については、「身だしなみのヒント(スリムの方が成績が伸びやすい、髭は剃れなど)」「交渉に有利な座る位置」「目線」「握手の仕方」など、知っておくと便利なノウハウが実に具体的に紹介されている。

 終盤には催眠効果のある会話集(主にミルトンモデル)、過去の書き換え、モデリングなど、あれ!そのまんまNLPだ、と言うことにNLPerならば気づくことだろう。

 そしていい復習になるし、NLPを知らない人にもセールスの裏の技を知る上で役に立つ。

 実は本書には「NLP」と言う言葉は出てこないが、読んでみると実に優れたNLPの実践書であることがわかった。

 それはともかく無意識レベルのコミュニケーションを知り、実際上のセールスに活かすことができると言う点で良書である。

「売れる営業」の話し方、その見逃せない心理術/ケビン ホーガン
¥1,313
Amazon.co.jp


カテゴリー: |―ビジネススキル パーマリンク