いや~面白かった!
ビジネス書コンジェルジュと言えば、かなりカッコいい響きであるが、実際は「ビジネス書ヲタク」と言ってもいい水野俊哉氏の、いわば「メタビジネス書論」とでも言えようか。
数日間も一歩も家から出ず、ひたすらビジネス書を読みふけり、読破すること年間千冊近く。
その膨大なビジネス書読書量からくる水野氏ならではの、まさに「トリセツ(取扱説明書)」である。
ビジネス書に精通しているだけあって、本書自体が、書き手にとってみても最高のお手本だと言える。
まずいかにも読みたくなるような「はじめに」から、最初は総論、一般論、それに対する著者の意見・批判、後半は売れっ子ビジネス書作家を一人ひとり切りつける各論。そして最後は視点を読み手から書き手に変えての補足的結論。
本書の面白いところは、まずは切れ味が抜群にいいこと。
例えば「読書術」の章では、多くのビジネスマンから支持されているフォトリーディングをバシバシに切っているが、これは誰かが言っておかねばならないところだろう。
「写真のような視覚的記憶を一般人が身につけるのは普通に無理」・・・・そりゃそうだ!
「もしも、本が一分程度で読めて内容を理解できるのであれば、とっくに予備校などが、その手法を受験生に教えていてもおかしくない」・・・・ごもっとも!
「(フォトリーディングのセミナーに)15万円も払うなら、そのお金でビジネス書を100冊買って気合を入れて読みきれば、知識もリーディングスキルも身につくのではないか」・・・・よくぞ言った!
実際、水野氏の言う通り、読書家の読み方とは、いわゆるフォトリー的な読み方を自然としており、本来は多読の習慣によって十分に身に着くスキルなのだ。
そのような厳しい意見も言いながら、水野流の真っ当な「読書術」についても紹介されてあり、それは大いに参考になるところだろう。
また、そのようなテクニック論だけでなく、いわゆるベストセラーの構造的解釈(6パターン)や、ベストセラー作家10人の「読み所」をバランスよく解説してあるのも面白い。
個人的にはパート5の「書き方」の法則が役に立った(実は拙著の執筆・販促においても大いに参考にさせてもらった)。
特に昨今はブログやメルマガなど一般の人でも多くアウトプットできるメディアが発達しており、そこから出版へと流れるケースも少なくない。
それだけ出版の垣根は低くなっているわけだが、出版の仕組みを知らないことには、おいそれと実現することはないだろう。
その点で言えば出版活動を「婚活」に例えられるのは興味深い。まさに編集者との出会いは恋愛に似ているかもしれない(私の場合は紹介で)。
とにかく本書はビジネス書オタクもそうでない人も、また読み手も書き手も、一度は目を通した方がいい貴重な情報が満載であろう。
巻末のマトリクス的整理も非常に興味深かった。
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