愉快痛快なインド旅行記。ヤンキーが立ち話してるみたいな文体で一気に読ませる。
おそらく日本では強面で通っている3人が珍道中を繰り広げる。確かにやくざっぽいサングラスにひげ面はインパクトがある。
行先はデリー、ムンバイ、ゴア、バラナシ、コルカタ、そしてインパール。
デリーからコルカタまでは言わばインドの王道とも言える観光地である。
とりあえずデリーは玄関口。ムンバイはインドにおける最大都市でありゴアまでの通過点。そしてゴアは西洋人にも人気が高いヒッピーの聖地。
バラナシは言わずと知れたインドの聖地中の聖地。コルカタは世界最悪の都市とも言われる、いわば植民地時代のインドらしいインド。
しかし気になるのはインパール。通常のツアーではもちろん、強硬なバックパッカーでもなかなか足を踏み入れることのできない、ある意味秘境の地。
かつての戦地として有名であるが、今でも治安面等で問題が多く、立ち入るには厳重なパーミットが必要となる。
そして日程はすべてガイドの監視がつく。そのような難しい地域にあえて立ち入ってみるのも、本旅行記の面白味の一つとなっている。
さすがの3人もやはりインドには手こずっているようだ。いちいちうまくいかない、インド人が鬱陶しい、しかしなかなか楽しそうではある。
案の定、ゴアではハッパをやり、もっぱらドラッグ談義に花を咲かせる。なかなか体験できない世界であるだけに、生の話は実に興味深い。
バラナシではなんと売春宿にまで足を運んでいる。東南アジアと違って、インドの置屋は意外なほどに避けられている。その描写はまさにエゲツナイ。
「なんとも香ばしい部屋だった。窓一つない独房のようなその中には、ダニのマンションになていそうなボロボロのベッドと水がたたえられたバケツと手桶しかなかった。
そして、ベッドから最も離れた一角の床。そのには小さな排水口が開けられており、それに掛っている金属の上には白い液体の入ったコンドームが3つ叩きつけられていた。しかも、周囲からは強烈なアンモニア臭が漂ってくるのである。察するに、排水口自体がトイレも兼ねているのだ。」
よくぞそんなところでコトに及べるものだと感心するが、著者は、、、やっぱりできなかったそうだ。実はかなり正常な精神を持っている。だからこそ本などもかけるのであろうが。
結局、本書はインド・アウトローの旅となっているが、実はこれもまた正常なインド旅行のあり方であり、単に多くの旅行記がこの部分を避けているに過ぎないとも言える。
インパールに入ることも、確かに「変わっている」という意味で、アウトローな旅には違いない。
インド旅行としては、ひとつの健全なあり方である一方、インド旅行記としてはかなりに怪しい部類に入る。まさしく「怪人紀行」であろう。
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