「美味しんぼ」でも「実に面白い」と取り上げられた本。日本人とカレーを取り巻く食文化論。そして面白い。
「美味しんぼ」で取り上げられたのが「カレー粉の謎」。つまり、そもそも「カレー粉」なるものはオリジナルにあるものか。
今でこそ日本でもインドカレーを初めとしたエスニック風のカレーがいたるところに見られるが、広まったのは実はそんなに最近のことではないように思う。
本書が刊行されたが1989年、つまり20年前であるが、その頃、「カレー」というと、やはりカレー粉やルーを溶かして、家庭や給食で食べられるものだったのではないか。
今のようにカレー屋のチェーン店も多くなかったように思う。
しかし本書で明らかになったのは、そもそも「カレー粉」など存在しないという事実。
つまり本場のインドでは、カレーは各種のスパイスを調合して、各家庭で異なった味となるのが一般的。
調理の最後に「ガランマサラ」というカレー粉のようなものを入れるが、これは単なる味の調節にためにあり、カレーのメインではない。
今、日本にあるインドカレーを食べると、そのことがわかっているので、なおのこと味の違いを楽しむことができる。
そもそも「カレー粉」とはインドを植民地支配していたイギリスが、一回一回スパイス調合するのが面倒で作ったもの。
それが日本に入ってきて、レストランや家庭で用いられるようになったとのこと。
とにかく著者の探求心が素晴らしく、カレーを巡って世界各地、歴史までさかのぼって見て食べ歩く。
日本にカレー(ライス)が入ってきたときは、なんとわずかなスパイスに肉は「かえる」を使っていたのだと。もちろん著者はそれは再現している。
カレー好きにはたまらない一冊だ。
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