「スピード・ブランディング」鳥居祐一著

 タイトルの通り、素早く自分をブランド化するための指南書である。「なぜ、ブランド化か?」に始まり、具体的なブランド化の方法までとてもわかりやすく、しかも実践的に書かれている。著者である鳥居氏の本に共通することだが、とにかく「わかりやすく実践的」である。今回は「パーソナルブランディング」に特化して、様々な事例とともに、いろんな方法論が紹介されている。

 これからの世の中、もしも二極化、あえて「勝ち組、負け組」という言葉を使わせてもらうと、その「勝ち組」に上がれるのは、「自分らしさ」を持っている人だと考えている。もちろん「勝ち」の定義は様々だろうが、自分自身が心から幸せで満足した生活ができれば、私は「勝ち」だと考える。

 そもそも苦しい人はなぜ苦しいのか。それは自分らしく生きていないからであろう。本当は一人でモノづくりとかするのが向いてるのに、会社の都合で営業させられたり、マネージメントさせられたり。それでたとえ給料が高くても、本人は苦しくて仕方ない場合だってあろう。ただ、今までは「自分らしさ」よりも「会社らしさ」が重視され、それで何とか食べていけるし、社会的にも認められる存在になり得た。

 しかし、これらはその「会社」自体が自分の価値を決めてくれるものではなくなってきた。バブル時などは「俺は山一證券の田中だ!」と言うと、かなり効力もあったのだろうが、今では何の意味もない。これは山一が破たんしたからではなく、そもそも会社のネームバリューで勝負すること自体、ちょっとイタイ人だと言える。少なくとも今の若者はそれでは反応しないものだ。

 もちろん会社勤めがいけないと言うのではない。これからは会社が自分のブランドを付けてくれる時代ではなく、逆に自分が会社のブランドを高めるような存在でなければ、生きていけなくなるということである。

 ただし、「自分らしさ」を求める時代であると言っても、社会生活をする上では、そこに「価値」がなければ意味もなかろう。「自分らしい」と言いながら、部屋に引きこもってアニメばかり見ているような人は価値もない。大なり小なり、そこに「社会的価値」がなければ、本当の意味で「幸せ」であるとは言えない。

 そこでこの「自分らしさ」と「社会的価値」を結びつけ、しっかりと根の張った幸せな人生を実現するための方策こそが、本書で力説されている「パーソナルブランディング」なのである。

 自分らしく生きることと、社会的に認められることは、言葉だけ見ると相反するように感じられるが、これを矛盾なく統合し、そしてより自分らしく、そしてより価値ある存在になるためには、やはりこの「パーソナルブランディング」が何よりも重要であろう。

 そして本書は「パーソナルブランディング」がいかに大切かを力説するだけの建前論に終わるものではなく、具体的にどうすればブランディングができるのかが、ステップごとに丁寧に解説されてある。詳しくは本書を手に取って読んで頂きたいが、このステップの上で特筆すべきことが「誰でもできる」というである。

 

 中には「ブランドなんて自分には関係ない」と思う人もいるかもしれない。なぜそう思うか。一つはブランドの効果を知らないから。もう一つはブランド化するための具体的な方法を知らない、もしくは限られた人だけの特別な方法なのだと思うからだろう。

 
 しかしこの「誰でもできる」ことを知れば、文字通り誰もが自分自身の「ブランド」に目を向けるものだと思われる。スマップの「世界に一つだけの花」という歌があるが、これからの激動の世の中において、本当に「花」たり得るには、やはり「自分」というブランドを大切にし、そして形にしていくことが、なにより重要だ。その意味で、本書で示される「誰でもできる」ということは、一人一人を本当の意味で「花」と咲かせる上で、力強いメッセージになるのではなかろうか。

 とにかくわかりやすく、そして実践的。詳しくは本書を読んで頂きたいが、一つだけ、ニンマリした記述があったので紹介したい。ブランド化する上で「ポジショニング」ということが重視されるのだが、芸能界という激しい競争業界において、この「ポジショニング」を知っていたおかげで、見事に勝ち上がっている人として、私も大好きな「島田紳助」さんを取り上げている。

 私は紳助フリークで、彼の出る番組のほとんどを見ていた時期もある。特に好きだったのが深夜にやっていた「BLT」と「松本紳助」であるが、それはともかく、紳助は番組の中でもよく「ポジショニング」という言葉を使っていた。彼の基本戦略は「負ける喧嘩はしない」だが、芸能界の立ち位置をよく考えて、いわゆる絶対に勝てる「ポジション」をしっかりと確保して、そして勝ち残っていった。そこはある意味「天性」で勝負できるさんまや松本にはない「策略家」として才能がのぞかせる。その意味で「マーケット」の性質をよく理解できることが、実業家としての成功にもつながるわけだ。

 ちなみに私自信もこの「ポジショニング」に関してかなり面白い位置にいると言うのが、鳥居氏の意見。例えば「営業」というポジションはすでに飽和状態であり、そこに食い込みには余程の独自性と絶対的な実績が必要になる。それならば、私は「営業」のポジションで勝負するのは得策ではない。せっかくいいポジションを持っているのに、自分の勝負できるところで勝負しろ、と言うアドバイスを常々受けていた。本当にその通りだろう。私自身もこの本を読んで、しっかりとブランディングしていこうと思う。

スピード・ブランディング―普通の人がブランドを確立し、成功を加速させる/鳥居 祐一
¥1,500
Amazon.co.jp


カテゴリー: |―ビジネススキル | 「スピード・ブランディング」鳥居祐一著 はコメントを受け付けていません

「願いがかなうNLP」山崎啓支著

 著者にとって2冊目となるが、一冊目の「NLPの基本がわかる本」がどちらかと言うとコミュニケーションに力点を置いたものであったのに対して、本書は「願望実現」に力点が置かれている。

 NLP創設者の一人であるジョン・グリンダー博士は「願望実現なくして、NLPの意味はない」と述べている通り、NLPはコミュニケーションにおいて非常に有効であると同時に、願望実現に対しても最強のツールである。

 ここ数年、日本でもNLP関係の本がたくさん出版されているが、そのほとんどがNLPのスキルやケースの紹介に留まり、NLPを根本的に理解するものではなかったと思われる。その意味で、著者の一冊目は画期的であり、「脳の3つの原則」など、著者独自のタームを盛り込みながら、NLPの本質に深く迫る一冊であった。

 実は私が最初にNLPを学んだところは、出版されている本のほとんどがスキルやケースの羅列に留まり、本質的な理解を促すものではなかった。セミナーに出たところで、「体験することに意味がある」「10日間通せば自然と身につく」みたいな言葉でお茶を濁されていたように思うが、実際に著者の山崎氏のセミナーを受けて、初めてNLPのことが少し理解できたように思いう。

 しかし、本書を読んでまず驚いたのが、スキルの紹介が一つくらいしか紹介されていないこと。それが「チェインプロセス」というスキル。NLPには基本スキルとして70程度の、その組み合わせを合わせると数百に及ぶスキルがあると言われているが、もしも本当に変化を起こしたいのであれば、実は2~3で十分かもしれない。

 その一つが本書で紹介されている「チェインプロセス」であり、それはリアルに「願望」を「実現」する最強のツールであろう。しかし、なぜ「チェインプロセス」が効果的なのか、それを知ってワークするのと、知らないでするのとでは、効果に雲泥の差が生じる。その「なぜ」を腹の底まで理解させるために、紙面の大半が割かれている。

 そのようなNLPや願望実現の本質理解、そして具体的に願望を実現する方法論についても、本書は秀でたものがあるが、行間を読めば、より深い世界を垣間見ることもできる。そして「NLPの基本がわかる本」は、まさしくNLPの解説書であったのだが、「願いがかなうNLP」は「人間・山崎啓支」を知る一冊でもあろう。

 山崎氏のサラリーマン時代は、半端ないくらいの「ダメ社員」だったとか。今でこそ日本を代表するNLPトレーナーであるが、その「ダメ社員」時代は本当にダメだったとのこと。本書にも書いている通り、営業成績が上がらないなんてものではなく、他の社員が取ってきた仕事までつぶしてしまうという、ゼロではなくマイナスの成績だったとか。そもそも「マイナスの成績」など、取ろうと思ってもなかなか取れないもの。しまいには経費の精算もできなくなってしまう。

 しかしそのダメ社員・山崎啓支も「ある出来事」によって数時間のうちに「トップセールスパーソン」に変化する。そのエピソードは終盤で語られるが、涙なしに読むことはできない。人間が本当に変化するとはこう言うことなんだろう。まったくできない奴が瞬時にしてできるようになる。その秘訣がここにある、と言うか、本当の意味で変わるには実際にはそれしかないのだ。

 本書はいわゆる「願望実現」をテーマとした本の中では最高峰だと感じるが、本当に大切なことまでは必ずしも言語化されているとは限らない。しかし実際は、それを言語化することは野暮なことなのかもしれず、それは本書で描かれる「人間・山崎啓支」から、それぞれの読者が感じ取ってもらえばいいだけのこと。そんな本だと感じる。

願いがかなうNLP/山崎 啓支
¥1,680
Amazon.co.jp


カテゴリー: |―願望実現・自己啓発 | 「願いがかなうNLP」山崎啓支著 はコメントを受け付けていません

「島田紳助の話し方はなぜ9割の人を動かすのか」久留間寛吉著

 1980年台、「紳助・竜介」という漫才コンビでブームをけん引した島田紳助も、今では見ぬ日はないテレビタレントとして活躍し、そして芸能界1,2を争う実業家で資産家でもある。

 本書は島田紳助の最大の武器でもある、その話術に焦点を当ててフリーライター久留間寛吉氏が分析、論述している。

 紳助の成功法則については、「紳竜の研究」というDVDで紳助本人が詳しく語っているので、本書の内容とも重なる部分は多いが、本書には紳助がテレビや著書などで語っている本音の部分を多く拾い上げている。さしずめ、ビジネス書という論述の姿を借りた、紳助の名言集であるとも言える。

 例えば、最初に目次を見て、気になる「言葉」があれば、そこから読んでもいい。紳助が芸能界で売れて、実業家としても成功するには、紳助の中に決してぶれることのない確固たる軸、つまり「哲学」があることがよくわかる。

 本書には人生において気づきを与える言葉がたくさん散りばめられてあるが、私が特に響いた言葉を紹介するにとどめたい。

「俺はもうおるで。成功者の真似は成功から遠ざかる道」

誰かみたいになりたいなんて、つまらない夢だなあと思う。
他人のようになろうとするのではなく、もっと自分になれと思う。
成功している人を見ると、あの人みたいにすれば成功できると思うかもしれない。
僕に言わせれば、それが一番成功から遠ざかる道だ。

島田紳助の話し方はなぜ9割の人を動かすのか/久留間 寛吉
¥1,575
Amazon.co.jp


カテゴリー: |―人物・評伝 | 「島田紳助の話し方はなぜ9割の人を動かすのか」久留間寛吉著 はコメントを受け付けていません

「相手を洗脳する文章テクニック」宮川明著

 心理学と言語学を足して二で割ったような、、、としばしば説明されるNLP(神経言語プログラム)を「文章」に生かせばどうなるか、という趣旨の一冊。

 インターネットマーケッターとして成功している宮川明氏がその「手の内」を明かすと言えば、非常に説得力が出てくるであろう。

 ただ、売れているセールスレターやコピーには、おのずとNLPのエッセンスが含まれており、ある意味、NLPを用いた文章テクニックと言うより、売れるための文章テクニックをNLP的に解説した、と言った方がより正確かもしれない。

 例えば「今すぐ契約しようとは思わないでください」のような否定命令文は、知る人ぞ知るH氏によるコピーライティングなどで有名だが、それは必ずしもNLPを知ってて書いたとは思えない。

 おそらく自然に出てきた言い方であろう。しかしながら、NLPが「成功者のモデリング」の技法であるとすると、いわゆる成功技法はほとんどNLPで解説できるとも言える。

 その点で成功する文章の書き方を、NLPと言う理論的ベースによって解説できるのは当然といえよう。

 ただし、それを正面からやった著書はなかったと思うので、文章を仕事とする人間にとっては、バイブルとなる一冊かもしれない。

 NLPをある程度知っている人間にとっては、特に目新し記述もなく、しかし、重要なことはほとんど網羅されているので、NLP入門者にとっては良質な教科書と言ってもいい。

 NLPもそうだが、自己啓発系の本にはしばしば「潜在意識」を使ったという表現が散見されるが、その多くは具体的な記述もなくわかりにくものばかいであった(またはあまりに具体的過ぎて逆にわらかない)。

 その点で、本書はいわゆる「潜在意識」に入り込む文章と、そうでない文章の違いがよくわかり、それは文章だけでなく、コミュニケーション全般でも生かせる内容である。

 

 特にわかりやすかったのが、「潜在意識」にうったえる文章は人間を「内面」に向かわせるというところ。

 人間の意識は常に「内面」か「外面」かのいずれかを向いている。そして人をトランスに導き、「潜在意識」のままにメッセージを送りこむには、意識を「内面」に向かわせる必要がある。

 そのためには、そのための「文章」や「言葉」があり、その方法論を一つ一つ解説しているのは、とても親切だと感じた。むしろやり過ぎの面もあるが、それは読者にとってありがたい側面であろう。

 本書はNLPを用いた文章テクニックとして、文章を仕事としている人はもちろん、NLPの初学者にとっても適切な解説書であり、著者の小まめさがよく出ている良書であると言えよう。

相手を洗脳する文章テクニック/宮川 明
¥1,575
Amazon.co.jp


カテゴリー: |―ビジネススキル | 「相手を洗脳する文章テクニック」宮川明著 はコメントを受け付けていません

独立奮闘記(17) ~願いを叶える欲張り天使(中編)~ (2007)

前回の続きです。

「ところで、天使ってなんで弓矢持ってるんですか?」

という間抜けな質問に対して、「(自称)天使」はどう答えたか?

「悪をやっつけるため・・」

「あの人のハートを射ぬくため・・」

いやいや!

そんなことじゃないんです!

そのて「天使」は、表情も変えずに、こう即答したそうです。

「趣味なんです」

「・・・え?」

「趣味なんです」

うん、要するに、持ちたいから持っているだけで、別に大きなもっともらしい意味があるわけじゃないんです。

なんだ、がっかり、、、と普通は思うところでしょうが、Kさんは、その答えを聞いて、

「深い!」

と思ったそうです。

私のその話を聞いて、同じく、「深い!」と思いましたもの。

つまり、物事にこうでなければならない・・・という理由など普通は存在せずに、誰もがやりたいからやっている、それが本来の世界であり、いわば「天使」の世界なんでしょう。

でも、私たち人間は、とかく物事に「理由」を求めたがります。

私は年間100日近く、滝に打たれていますが、その理由を聞かれても漠然としか答えられません。

「え・・いや・・・打たれたいから」

おそらくその理由を求めてくる人は、精神修行とか、神通力を身につけるとか、何かともっともらしい答えを期待しているのかも知れません。

確かにそんな時期もまったくなかったわけではありませんが、今は本当に純粋に「打たれたいから」なのです。

本来、物事に理由はない。そして価値もなければ、判断もない。

ただ、そこにあるだけ。

天使が弓矢を持っているのは、一応、「趣味」と答えたのだけど、単純に持ちたいから持っているだけ。

それが天使の世界。そして本当の世界。

私たち人間も、ただやりたいことをやればいい。

それが最もリアルな世界なのだから。

(つづきます)


カテゴリー: ◆独立奮闘記 | 3件のコメント