「これだけは知っておきたい「心理学」の基本と実践テクニック」匠英一著

 「心理学」を基本から学びたい人、整理したい人には超うってつけの一冊。学術的な部分も触れてはいるが、後半では「恋愛」「仕事」「人間関係」に役立つ実践的なテクニックが中心となっている。この一冊でいわゆる対人折衝に用いられる心理テクニックは網羅されているかもしれない。法則集として辞書的に用いることも可能だ。

 著者の経歴を見るとミルトン・エリクソンを系譜とする今流行りの現代催眠に造詣が深いことがうかがえるが、前半ではフロイト、ユングに始まり、専門分化されたアカデミック領域での心理学についても整理されている。しかし著者の真骨頂はすでにベストセラーで読まれているとおり、すぐに使える実践的な心理テクニックの範疇にあるのだろう。

 第三章では「恋愛」がテーマ。例えば、

・合コンを成功させ人気者になる → 薄暗い部屋で合コンを行う
・気になる異性の心を見抜く方法 → 瞳孔の拡大に注目
・女性に好感をもたれる話し方 → はじめにけなしてあとからほめる

など、個別ケースにおける心理テクニックが紹介される。その他、第四章の「仕事」では、

・営業トークに説得力を持たせる方法 → メリット・デメリットを話す
・商談を成功させる方法 → 食事をしながら商談を進める(ランチョンテクニック)
・会議で自分の意見を通す方法 → 座る位置が重要

 第五章の「人間関係」では、

・信頼関係を高める話し方 → 自己開示をする
・ユーモアのセンスを身につける方法 → ステレオタイプを崩す
・うつ、PTSD、DVとは → 心の闇?

など、読んですぐに実行できるテクニックばかりである。ただし、基本中の基本であるため、上級者向けではない。あくまで初心者を対象とした、心理テクニック入門編として手に取ってみるといいだろう。

これだけは知っておきたい「心理学」の基本と実践テクニック/匠 英一
¥1,365
Amazon.co.jp


カテゴリー: |―ビジネススキル | 「これだけは知っておきたい「心理学」の基本と実践テクニック」匠英一著 はコメントを受け付けていません

「催眠術の極め方」林貞年著

 林貞年氏による催眠三部作の三冊目。「催眠術のかけ方」は催眠術への導入からセックスなどへの応用まで、「催眠誘導の極意」は催眠の歴史背景から自己催眠まで、そして三冊目の「催眠術の極め方」については、いわゆる催眠を用いた願望実現法までと幅広い。

 この三部作、つまり林貞年氏の「催眠」は、いわゆる「古典催眠」からエリクソン派の「現代催眠」まで広くカバーしており、およそ「催眠」に関する知識やノウハウはこれで事足りるではと思われる。中には頸動脈を抑えるなど、やや乱暴な催眠術まで紹介されているが、なるほどと思わせる部分もある。

 昨今、NLP(神経言語プログラム)や潜在意識を活用したコミュニケーション、願望実現に関する本が氾濫しているが、それらの基本的な考え方はこの三部作で抑えることができる。ただし、本当に「催眠」を学び活かすためには、単なる文字情報だけでは絶対的に不十分であり、本書をベースとしながら、各種ワークショップなどで実施するのがいいと思う。

 しかし、「催眠」のプロになろうと思わずとも、本書の「催眠」的なテクニックや考え方は知っておいた方がいいものも少なくない。たとえば、なぜ「言い訳」はよくないのか、「言い訳」は自己成長を著しく損なわせるのであるか。そのような簡単な理屈を知っているのと知らないのとでは、これからの人生に雲泥の差が出るであろう。

 余談であるが、実はこの三部作は人には教えたくなかった。第一の理由は、「催眠」というと怪しい雰囲気があるので、変に誤解される恐れもあったから。そしてもう一つの理由は、私がそれとなく使っているテクニックがばれるからである。以上。

催眠術の極め方―瞬間催眠術を超えた伝説の技法が習得できる!/林 貞年
¥998
Amazon.co.jp


カテゴリー: |―学習・能力開発 | 「催眠術の極め方」林貞年著 はコメントを受け付けていません

「日々の暮らしを楽にする」小林正観著

 いつの間にか一般書店でも数多く見かけるようになった小林正観氏による一冊。4~5年前までは特定の出版社の特定の書店かインターネットでしか買うことができない「知る人ぞ知る」人であったのだが、今では出す本がほとんどベストセラーなので、広く知られるようになっている。

 もともとは旅行作家という肩書であるが、今では年に300回以上の講演会を展開し、出す本のほぼすべては出版社付きのライターが講演会を書き起こした内容となっている。従って、どの本も同じような内容であり、本書も例外ではない。しかし、初めて小林正観氏の本を読む人であれば、最初の一冊としてはとっかかりやすいであろう。また、小林正観ファンにとっては、おそらく新しいと思われる記述もあるので後述したい。

 本書は全部で13章あり、各章ともテーマが設定されている。

第一章:自分探し
第二章:他人の問題
第三章:恋愛・結婚
第四章:夫婦関係
第五章:子育て
第六章:仕事
第七章:お金
第八章:健康
第九章:死
第十章:霊
第十一章:占い・予言
第十二章:感謝
第十三章:実践

とまあ、人生に関わる問題のほぼすべてが網羅されている。いい話、すぐに実行できる話、そして感動する話も多く、読むと気持ちが楽にはなるだろう。今流行りの「トイレ掃除で臨時収入」などの話も、おそらく正観氏がその走りではないか。実際にトイレ掃除だけで収入が得られることはないにせよ、トイレ掃除が悪いはずもなく、やってて自他ともに気持ちがいい。当り前の話である。

 全体的なトーンは「現世利得」の追及をお釈迦様や宇宙エネルギーなどスピリチュアル(オカルト)要素で実現しようとするものであり、汗臭い努力を嫌う現代人の心をわしづかみする。ただ、トイレ掃除は確かにいい習慣であるが、それさえやっておけば・・・という安易な現実逃避につながるよう人に対しては、本書は毒にもなろう。

 
 目新しい記述としては「占い・予言」に関する一章。ややもするとスピリチュアル(オカルト)好きの多く(つまり本書を手に取りがちな人)は、占いや予言などの類に依存する傾向がある。そのような現象を皮肉っている様はある意味痛快。

 とりわけ、おそらくはジュセ・・さんのことなのであろうが、「いつどこで大地震が起こる」みたいな予言は「悪魔の側」の話であり、聞く必要は一切ないと一刀両断している。全体的にはとてもいい本かもしれない。しかしこれは大人の読むもので、中学生などリテラシーのしっかりしていない人はまだ読んではならない。

日々の暮らしを楽にする/小林 正観
¥1,500
Amazon.co.jp


カテゴリー: |―宗教・精神世界 | 「日々の暮らしを楽にする」小林正観著 はコメントを受け付けていません

「弱者の戦略」栢野克己著

 著者は福岡在住で個人零細企業向けコンサルタントを営んでいる。私も何度か事務所にお邪魔したことがあるし、セミナーなどでもしばしば顔を合わせることがある。「弱者の戦略」とはいわゆる大企業大手など「強者」に対して、個人零細企業など「弱者」がいかにして勝ちあがっていくかの手法のこと。

 しかしそれは何も特別なことではなく、最初はどんな大企業も「弱者」からスタートし、そこから勝ち上がってくために必然的に取らざるをえない戦略のことであり、著者はそれを経営の「原理原則」と呼んでいる。専門的には「ランチェスター経営」などと言われることもあるが、本書は経営学的な小難しさを一切排した、読み物としても楽しめる一冊となっている。

 「弱者の戦略」とは、別の言い方をすれば、「強者(大企業大手)」がやらない戦略のこと。さらに言えば、個人零細企業が「強者」のやり方でやっても勝てる見込みはない。これを実際の「うどん屋」の例をとって解説してある。

 失敗例の特徴は大量生産、特定ターゲットなし、不特定への営業など。体力のある大企業であれば、数にモノを言わせて広げていくことも可能であろう。しかし、それと同じことを個人零細企業がやっても限界がある。

 では、「弱者の戦略」とは何か。一言で言うと「一点突破」である。商品を絞り(差別化し)、地域を限定し、客層も広げず、営業は顔見せ第一、など。つまりここにしかない、ここでしかできないことに集中してやっていくしかないのである。実は旅行会社のHIS、コンビニのセブンイレブン、コーヒーのタリーズなども、最初は「一点突破」で勝ち進んでいったのである。

 
 そのような「弱者の戦略」、つまり経営の原理原則に触れた後、後半では著者一流の人生・経営哲学に言及される。それを著者は「夢・戦・感(夢・戦略・感謝)」と呼ぶ。

大事なのは、資本主義社会で生きていくためには、「夢×戦略×感謝」の全部が必要だということ。夢だけでは食えぬ。戦略(+戦術)だけでは疲弊する。感謝だけではカモにされる。「夢×戦×感」のバランスが大事なのだ。(88頁)

 共感する。これぞまさに人生の原理原則ではないだろうか。また、終盤では著者のヘタレな生い立ちが紹介される。借金、うつ、包茎(の話は本書にはないがブログにはある・・・)。著者が今現在、どの程度の成功度合か比べようもないが、少なくとも、失敗度合でも著者はかなりキテいる。読んでて笑える。だからいい。だから全国にファンがいる。

 ちなみに私自身も著者とかぶさるところは少なくない。ニート、ワーキングプア、ブログ、講演活動、世界一周、福岡在住など。人は誰もが弱者である。あの強者も弱者からスタート。その弱者が最初に何をやるべきか。本書には参考になる記述も多いであろう。

 ちなみにブログは過激で面白い。知る人ぞ知るJAL事件をはじめ、常識的にはちょっと言いにくいことをズバズバ言ってのける口調には溜飲が下る。しかし敵にはまわしたくない。

弱者の戦略―人生を逆転する「夢・戦略・感謝」の成功法則/栢野 克己
¥1,365
Amazon.co.jp


カテゴリー: |―ビジネススキル | 「弱者の戦略」栢野克己著 はコメントを受け付けていません

「いやな上司はスタバに誘え!」西田一見著

 よりよい人間関係を構築するための一冊。この手の本の多くは、NLP理論を援用しただけのラポールやミラーリングなどの用語の羅列が目立つが、西田親子一流の「脳力開発」をベースにした人間関係論となっており、斬新な印象を受けた。

 とりわけ「イメージ変換シート」などは、わかりやすく効果的であろう。単純な理屈であるが、人間関係に限らず、様々な願望実現法に活用できる。

 組織の中にいると、どんなに実力があったとしても、自分の力を十分に発揮できることは限らない。やはり第一に頼りにするのは、自分自身の実力より前に、直属の上司であろう。そんな至極当たり前のことであるが、十分に認識されているとは限らないし、私自身のサラリーマン時代を振り返ってみても耳の痛い話である。

 具体的には帯にも書かれてある通り、「上司の言い付けに対しては、0.2秒でYESと言う瞬間を付ける」ことは、何も人間関係に限らず重要であろう。とにかく「すぐする」ということは、「脳」にとってもいい状況をつくり、そのような習慣を持つ人だけが、組織で認められ、そして成功するのであろう。

 いわゆる西田理論を体系的に解説された本ではないもの、いわゆる「当たり前に大切なこと」が論理的に腑に落ちる内容になっているため、見出しを見て、特に自分にとって必要だと思うところから読んでもいいかもしれない。

 よりよい人間関係を構築して、よいコンディションで仕事を進めて行きたいと思う人には、一度は手にとって各項目ごとにチェックしていくことをお勧めする。

いやな上司はスタバに誘え!ー人間関係に奇跡を起こす逆転脳の秘密ー/西田 一見
¥1,365
Amazon.co.jp


カテゴリー: |―ビジネススキル | 「いやな上司はスタバに誘え!」西田一見著 はコメントを受け付けていません