Solo Cycling · Korea 2017

韓国、自転車の旅福岡から釜山、ソウルへ

2017.09.08 — 09.19 / SOLO / Busan → Seoul

期間12日間
同行自転車
舞台釜山 → ソウル
目的ソウル講演

二〇一七年九月、自転車でひとり、韓国を縦断した。博多港からフェリーで釜山へ渡り、洛東江、そして漢江沿いの自転車道を、ただひたすら北へ。釜山、密陽、大邱、尚州、聞慶、忠州——河は、どこまでも青かった。ゴールは、ソウル。そこで待っていたのは、人生初の通訳つきトークライブと、韓国版『3つの願い、100日の奇跡』を出してくれた出版社の人たち。二十五年前、初めての海外旅行も、この釜山だった。あの頃の自分に見せてやりたい、最高の十二日間。

ROUTE / 走った地図

Sea of Japan ソウル 両水里 忠州 聞慶 尚州 大邱 密陽 釜山 福岡 GOAL START 釜山・ソウル 自転車のルート フェリー(博多港→釜山)

▲ 2017.9.8 出発 … ひとり、自転車で釜山からソウルへ … 9.19 帰国 ▼

9.8

いざ、釜山へ / 福岡 → 釜山

2017.09.08(金)

「二十五年前、初めての海外も、この釜山だった。」

朝、息子たちと食卓を囲み、九時半に家を出る。一時間ほどで博多港国際ターミナルへ。釜山行きのフェリーは、燃料費も自転車の積載料もぜんぶ込みで四千五百円。大阪に帰るより、ずっと安い。国際船に自転車を載せるのは初めてだったが、パスポートコントロールも、あっさり通過した。

博多港から釜山行きのフェリー
HAKATA — 自転車ごと、釜山行きのフェリーへ

船室を確保して、ランチはカップラーメンとビール。途中、対馬のそばを通る。こうして海から見ると、対馬は韓国のほうがずっと近い。三時間ほど眠るうちに、午後六時すぎ、釜山に到着した。思えば二十五年前、初めての海外旅行も、この釜山だった。当時はビザが要ったが、今はフェリーでふらりと来られる。隣の国は、こんなにも近い。

フェリー船内でカップ麺とビール
FERRY — 船室で、カップ麺とビール

宿は港から自転車で十五分の東横イン。内装も表記も、日本とまったく同じだ。少し街を歩いてみる。やたらと目につく「モーテル」は、ラブホテルでありながら、安宿として普通に使われているらしい。夕食は、キムチ冷麺。冷たくて、辛くて、酸っぱくて、美味い。これで五百円。自転車は、明日から。今日の走行は、まだ十五キロ。

キムチ冷麺
냉면 — 冷たく辛く酸っぱい、釜山の冷麺

ブログ原文 ▸ いざ、釜山へ!!

9.9

洛東江を、北へ / 釜山 → 密陽

2017.09.09(土)

「ここからソウルまで、川沿いに一直線。」

釜山の市内は、自転車では走りにくい。それでも乙淑島まで出ると、そこから先は——洛東江沿いの自転車専用道路が、ソウルまで一直線に続いていた。これがよく整備されていて、休憩所も売店もトイレも、空気入れまである。韓国はいま、自転車がブームらしい。ただ、空気はあまり良くなく、みんな専用のマスクをして走っている。ランチは、コンビニのおにぎり。

洛東江沿いの自転車専用道
낙동강 — 川沿いに、どこまでも続く自転車道

河には、こんなふうに遊歩道が渡され、沼地には浮き橋がかかる。日本では、なかなか見ない大きさだ。釜山の中心は高層ビルが建ち並ぶ都会だが、走るほどに高層マンションの住宅地となり、やがて、完全な田舎になる。韓国の田舎を走るのは、初めてだ。実に、いい。

河にかかる浮き橋
BRIDGE — 沼地には、こんな浮き橋が渡る

自転車道沿いは宿が少ない。三時頃に見つけた旅館を「まだ早いな」と通り過ぎ、少し不安になりかけた頃、ようやく街が見えてきた。密陽という街だ。そこそこの規模で、宿にも困らなそう。ひとりだと、こうして毎晩、その日の寝床を自分で探す。それも、また旅だ。

韓国の田舎道
시골 — 青春のような、韓国の田舎道

ブログ原文 ▸ 釜山から密陽市へ

9.10

スイカソーダの街 / 密陽 → 大邱

2017.09.10(日)

「福岡から自転車でソウルへ。日本初の試みだろう。」

密陽は、お寺もある観光地らしい。物価は、いまの実感で日本の八〜九割といったところ。ガソリンスタンドのコンビニで水分補給。せっかくなので「スイカソーダ」なるものを試してみる。ひと口目はスイカ風味でいいが、炭酸のあとに、とんでもない甘さが押し寄せる。一言でいうと、まずい。でも——最高。

スイカソーダ
수박 — まずい。でも、最高のスイカソーダ

今日は自転車道ではなく、普通の道で大邱を目指す。ソウル、釜山に次ぐ韓国第三の都市だ。スーパーでお惣菜を探すもなく、中身を確かめずに指さしで買ったパンは、アンドーナツとポテサラドーナツだった。喉が渇いていたし、美味い。整備不足の自転車はローギアがギシギシ鳴り、急な登りは降りて押す。

韓国のパン
빵 — 指さしで買った、謎のドーナツ

来週には、いよいよソウルでのトークライブ。考えてみれば、福岡から「自転車」でソウルまで走り、そこでセミナーをする日本人講師なんて、おそらく日本で初めてだろう。そんなことを思いながら、ハングルのキーボードの打ち方を覚え、ペダルを漕ぐ。大邱まで、あと十九キロ。

密陽の街
밀양 — お寺ものこる、密陽の街を抜けて

ブログ原文 ▸ 密陽から大邱へ

9.11

雨の休息、大邱にて / 西門市場

2017.09.11(月)

「出発が二日遅かったら、釜山から出られなかった。」

今日は雨。自転車は、休息だ。夜中は大雨だったようで、LINEで連絡をくれた韓国の方によると、釜山は街中が大洪水とのこと。もし出発が二日遅かったら、そもそも釜山から出られなかったかもしれない。大邱は、大丈夫だった。釜山の復旧を、ただ願う。

大邱の西門市場
서문시장 — なんでも揃う、大邱の西門市場

宿でゆっくりしてから、徒歩十分の「西門市場」へ。なんでも売っていて、屋台もたくさん。手招きされた店で、無難にウドンを頼む。韓国語でも「ウドン」だ。出てきたのは、ウドンとキンパプ(のり巻き)。ウドンの汁はやや薄く、麺も半分残したが、キンパプは安定の美味さで完食。

大邱の市場に並ぶ料理
대구 — 市場の屋台に並ぶ、大邱の名物

大邱はホルモンが名物で、漢方・薬膳の街としても有名らしい。市場のあちこちが、漢方薬の匂いで満ちていた。曇り空のなか、街には大邱タワー。米粉の衣のアメリカンドッグなど、韓国ならではの食べ歩きも楽しい。雨の一日も、悪くなかった。

大邱の市場に並ぶ漢方薬
한약 — 漢方・薬膳の街、市場に並ぶ生薬

ブログ原文 ▸ 大邱市にて

9.12

未来都市のような / 大邱 → 尚州

2017.09.12(火)

「これは大陸なんだな、と思う。島国の日本と違って。」

昨日しっかり休んで、今朝は早起き。宿のオーナー(通称クマさん)も、同宿の日本のご三方も、まだ眠っているうちに、ひとりセルフで朝食をとる。大邱は福岡から飛行機で片道三千円ほどというし、またフラッと来たいな。出発の支度をしていると皆さんも起きてきて、写真を撮って、見送られた。いい宿だった。

韓国の高層建築
未来都市 — 日本では見ない、整然とした高層群

地盤や地震の関係だろうか、日本ではしない建て方の高層マンションが、ずらりと並ぶ。なんだか、未来都市のようだ。「夢なにTシャツ」を着ていると、日本語の読める人からよく声をかけられる。韓国のサイクリストは、頭から足先までフル装備。短パン、Tシャツ、サンダルのオレとは、えらい違いだ。ランチは、最近できたらしいコンビニ弁当。韓国風の味つけが、うれしい。

韓国のコンビニ弁当
도시락 — 韓国風の味つけが、うれしいコンビニ弁当

少し大きめの街、亀尾に着く。後ろにはロッテグループの、ひたすらデカいデパート。ああ、これは大陸なんだな、と思う。島国の日本とは違う。ここでフェイスブックのライブ中継をしながら、さらに北の尚州へと向かった。

亀尾の街
구미 — 大陸を実感する、亀尾の街

ブログ原文 ▸ 大邱から尚州へ

9.13

プラーナを浴びまくる / 尚州 → 聞慶

2017.09.13(水)

「とにかく青い。ただ、ひたすら青い。」

モーテルを出ると、受付のおじさんとばったり。韓国語で何やら話しかけられ、意味はわからないが、言わんとすることは通じる。「今日もいい天気だ、気をつけて行けよ」——きっと、そんなところだ。今日も河沿いを走る。韓国の河は、日本のよりずっとデカい。大陸だもんな。そして、とにかく青い。ただ、ひたすらに青い。

青い河と空
氣 — 青に満ちた、河沿いの一本道

昼どき、ちょうどよく食堂が現れる。アンニョンハセヨと入り、食べる仕草をすると、「これしかないよ」と。出てきたのは、素麺の冷麺。そのままでは味が薄いので、キムチを足すとちょうどよくなった。チャンチククスというらしい。結婚式など、お祝いの席でよく食べる麺だとか。なるほど、祝福されている、ということだな。

チャンチククス
잔치국수 — お祝いの席の麺で、祝福される

韓国ドラマの歴史ものに出てきそうな家屋。その上に、ただ青い空。もう、ひたすら美しい。天気が最高だからだろうが、毎日こうも晴れるのは珍しい。「氣」に満ちている。プラーナを浴びまくっている。この旅で、相当なエネルギーをチャージできた気がする。聞慶の街で、今日も一日が暮れた。

韓国ドラマ風の家屋
한옥 — 歴史ドラマに出てきそうな家屋

ブログ原文 ▸ 尚州から聞慶へ

9.14

どんどん上昇する / 聞慶 → 忠州

2017.09.14(木)

「一時間登って登頂。氣に満ちた、いい眺め。」

今日もいい天気。九時に出て、近くのコンビニで朝食。この感覚は、日本とまったく同じだ。郊外に出ると、忽然と立派な門が現れる。そして、峠。自転車道とはいえ、ほとんど路肩だ。一〜三速だとチェーンがギシギシ鳴るので、ときどき降りて押す。一時間ほど登りつめて、登頂。ものすごくいい眺めで、ここもまた、氣に満ちていた。

峠の登頂からの眺め
고개 — 一時間の登りの先、氣に満ちた頂

気になっていたトウモロコシのアイスを、ここで。うん、普通に美味い。あとは一気に駆け下りて、平地を進む。自転車道ではない、ただの田舎道だが、この田園風景がたまらない。

トウモロコシのアイス
옥수수 — 気になっていた、トウモロコシのアイス

小さな街でランチ休憩。所持金のウォンが心もとなかったので、コンビニで。韓国のコンビニにはたいていイートインがあって、いつも誰かが何か食べている。隣ではOLさん風の二人が、インスタントラーメンをすすっていた。日本ではあまり見ない光景だ。オレのランチは、三三五円。普通に、食える。

ブログ原文 ▸ 聞慶から忠州へ

9.15

龍の背中に乗って / 忠州 → 両水里

2017.09.15(金)

「二日ほど前から、急に『龍』の存在を感じる。」

今日もまた、快晴。とはいえ、腹が減っても開いている店もコンビニもなく、ただ走るしかない時間が続く。途中、ちょうどいい場所があったので、自転車にまたがったまま動画を一本配信した。じつは二日ほど前から、急に「龍」の存在を感じるようになっていて、その話をしたのだ。河沿いを走っていると、ふと、そんな感覚に包まれる。

快晴の河沿い
龍 — 快晴の河を、龍の背に乗るように走る
VIDEO — 河沿いから配信した、二分間の動画

十時、ようやく小さな街。日本の感覚だと、田舎のローカル店はやや衛生面が気になることもある。ハエもたくさん飛んでいた。でも、それも含めて、旅だ。五枚のパネルの真ん中を指さして頼むと、出てきたのは水餃子。中華かと思いきや、正真正銘の韓国料理で、正月によく食べるのだという。薄味なので、辛いのを足すと美味しくなった。そして、ソウルに近い両水里へ。

韓国の水餃子
만두 — 正月に食べるという、韓国の水餃子

ブログ原文 ▸ 忠州から両水里へ

9.16

ああ、着いちゃった / 両水里 → ソウル

2017.09.16(土)

「このラストランほど、切ないものはない。」

両水里は、ソウルに近いわりに、かなりローカルでいい街だった。飲食店も飲み屋もやたら多くて、にぎやか。朝は早くから市場が立ち、アーケードではおばちゃんたちが野菜を露天で売っている。コンビニで朝食を買い込み、いよいよ——ラストランだ。

両水里の朝の市場
양수리 — ソウルの手前、ローカルな両水里の朝

自転車の旅は何度もやってきたけれど、このラストランほど切ないものはない。ああ、終わるなあ——そう思うと、走る速度まで、心なしか遅くなる。雄大な自然は少しずつ消え、人工物の割合が増えていく。韓国ドラマに出てくるような、おしゃれで都会的な空気が、漂いはじめた。

ソウルに近づく都会的な風景
SEOUL — 都会的な空気が、漂いはじめる

自転車が集まる休憩所のコンビニで、のり巻き。海苔にごま油がかかり、ご飯は酢飯じゃない。韓国の人にとって、これは「寿司」とはまったくの別物らしい。河沿いには、数え切れないほどの運動マシーンが並ぶ。ソウルに近づくほど多くなる。そして、ついに——着いてしまった。福岡を出て、九日。ひとりと、一台の自転車で。

ブログ原文 ▸ ああ、着いちゃった・・・(笑)

9.17 – 9.18

そうだ、ソウルから始まるのだ / トークライブ & 出版社

2017.09.17(日)— 09.18(月)

「言葉が、人生を変える。『どんどん良くなる』と、繰り返し唱える。」

ソウルでのトークライブ当日。会場の案内表示には、ちゃんと「自転車TALK LIVE」とある。通訳の方と二人でセミナーをするのは、人生で初めての体験だ。同時通訳にも長けた相棒のおかげで、驚くほどやりやすい。鉄板のネタも、ハングルに訳されると不思議な感覚だが、韓国の方々にも、ちゃんと笑ってもらえた。ちょうど新刊『言葉が人生を変える』を出したばかり。言葉を変えれば、人生は変わる——そのことを、海を越えて伝えられた。

トークライブ会場の案内表示
TALK LIVE — 会場の案内に「自転車TALK LIVE」の文字

翌日は、韓国版『3つの願い、100日の奇跡』を出してくれた出版社へ。韓国では誰もが知る大手で、社長は敬虔な仏教徒、出版を決めるのも最終的には瞑想のインスピレーションに従うのだという。僕の本も、そうやって選ばれたのかもしれない。会社近くの韓料亭でのランチは、すべて野菜の伝統料理。胃にやさしく、美味しかった。そのまま取材も受け、ポーズをとっての撮影まで。気づけば、韓国メディアにデビューしていた。

出版社近くの韓国伝統料理
한정식 — 出版社の人たちと、野菜の伝統料理
韓国メディアの取材を受ける
취재 — 出版社で、韓国メディアの取材を受ける

ブログ原文 ▸ ソウルから始まるのだ韓国LOVEな一日

9.19 / 帰国 / HOMEWARD

ああ、あの日に帰りたい / ソウル → 福岡

2017.09.19(火)

「九月八日の、あのフェリーの中に、戻りたい。」

ついに、帰国の日。ああ、あの日に帰りたい。九月八日、自転車で家を出て、博多港から釜山へ渡る、あのフェリーの中に。本当に、最高の十日間だった。三日お世話になったソウルのホテルをチェックアウトし、自転車をダンボールに詰める。サイズがほんの少し足りず、はみ出る部分をガムテープでぐるぐる巻きにして、なんとか収めた。

自転車をダンボールに梱包
PACKING — 相棒の自転車を、ダンボールに詰めて

最後は、お茶会。セミナー当日に来られなかった人もいたので、三日に分けてカフェに集まり、たくさんの人と語り合った。一回の注文でいくら居ても文句を言われないのが、韓国のカフェ文化。マンゴーのショートケーキに、カフェラテ。入れ代わり立ち代わり、いろんな話をした。隣の国にも、こうして自分の言葉が届く場所がある。

マンゴーのショートケーキとカフェラテ
CAFÉ — マンゴーのケーキで、最後のお茶会

福岡から自転車でソウルへ。「3つの願い、100日の奇跡」という、たった一冊の本が、海を越えて、こんな旅とこんな出会いを連れてきてくれた。願いを書けば、言葉を変えれば、人生はちゃんと動きだす。釜山からソウルまで、青い河に沿って漕いだ十二日間が、それを証明していた。ただいま、福岡。

ひとりで、自転車を漕ぐ。毎晩、自分で寝床を探し、指さしで飯を頼み、青い河に沿ってただ北へ。二十五年前、初めての海外で降り立った釜山から、ゴールのソウルまで。隣の国は、こんなにも近くて、こんなにも広かった。言葉が、人生を変える。そして、一台の自転車が、その言葉を、海の向こうまで運んでくれる。

— Q / 「どんどん良くなる」と、繰り返し唱えながら。