Solo Cycling · Europe 2019

ヨーロッパ、自転車の旅ひとりで、五十三カ国目へ

2019.05.12 — 05.26 / SOLO / 50–53rd country

期間15日間
同行自転車
舞台スイス〜モナコ
通算50–53カ国目

二〇一九年五月、自転車でヨーロッパを走った。チューリッヒから、ドイツ、オーストリア、リヒテンシュタイン、イタリア、そしてモナコへ。スイスで人生五十カ国目、モナコで五十三カ国目。基本は、たったひとりの旅だ。Tシャツに短パン、サンダル、寒ければダウン。宿はペンションか、テント。「お金持ちの国」を、自転車とキャンプで駆け抜ける——お金があってもできない、豊かで自由な旅。最後にモナコで仲間と落ち合うまで、僕はずっと、ひとりでペダルを漕いでいた。

ROUTE / 走った地図

Mediterranean 50 51 52 53 チューリッヒ スイス ドイツ オーストリア リヒテンシュタイン クール(スイス) イタリア 地中海へ モナコ START GOAL 到達国(50–53) 通過 自転車のルート

▲ 2019.5.12 出発 … ひとり、自転車で五十三カ国目へ … 5.26 帰国 ▼

50COUNTRY
5.12 – 5.14

出発、そして五十カ国目 / 福岡 → チューリッヒ

2019.05.12(日)— 05.14(火)

「ひとり旅だからこそ、トラブルも楽しめる。」

出発の朝。七時半に起きて滝行を済ませ、自転車ごと車に積んで福岡空港へ。自転車はひと足先に、北京経由でチューリッヒまで送ってもらう。今回はマイルを使ったビジネスクラスで、行きはエアチャイナとスイス航空、帰りはブリュッセル航空とANA——複数のキャリアを組み合わせる、ちょっとした達人技だ。出発前、「ラウンジ福岡」でビールとカレー。空港では「Qさんですよね、YouTube見てます」と何度も声をかけられ、うかつなことはできないなと苦笑い。

福岡のラウンジでビールとカレー
LOUNGE — 福岡のラウンジで、ビールとカレー

北京では、十二時間の長いトランジット。ケチって空港のラウンジで夜を明かすのは、潜在意識に「私は貧乏です」と刻むようなもの。だから五千円でも、ホテルできちんと眠る。お金を引き寄せるコツは、ただひとつ——「お金持ちの気分でいること」。今回めぐるのは、スイス、リヒテンシュタイン、モナコ。いわば「お金持ちの国」だ。とはいえ移動は自転車、宿はキャンプ。お金があってもできない、もっと豊かで自由な旅をしに来た。

スイス航空の機内から朝日
SWISS AIR — フラットベッドで「幸せだなー」と眠る

もっとも、その北京の宿で、さっそくトラブル。地図を頼りにホテルへ歩いて向かうと、ホテルがない。道に迷い、結局はパトカーで送ってもらう始末だ。同行者がいたら怒られそうだが、ひとり旅だからこそ、こういうトラブルも笑って楽しめる。翌朝のスイス航空でチューリッヒへ。そして、着陸——人生五十カ国目は、スイス。それも、自転車と一緒の入国だ。今回めぐる「お金持ちの国」の、最初の一国に降り立った。

チューリッヒ着陸
ZÜRICH — 人生50カ国目に、自転車とともに降り立つ

ブログ原文 ▸ 欧チャリ2

5.14

スイス → ドイツ / 走り出す

2019.05.14(火)

「Tシャツ、短パン、サンダルにダウン。これがオレのスタイル。」

初日の夜は、スイスに暮らす尚美さんの邸宅に泊めていただいた。庭にはプール。豊かさが、にじみ出ている。朝食は、名物のパリッとしたクロワッサン。なんと美味いのだろう。空には二メートルはあろうかという大きな鷲が舞い、「珍しいんですよ」と言う。歓迎されている気がして、思わず大ジャンプ。Tシャツに短パン、サンダル、寒ければダウン——これが、オレの走りのスタイルだ。四十六歳には見えない、少年チャリダーのなりで、いざ出発。

スイスのクロワッサンの朝食
BREAKFAST — スイス名物、パリッとしたクロワッサン

目指すは、ドイツ国境の街コンスタンツ。二十二年前にも南ドイツを走ったが、ヨーロッパの田舎は、あの頃のままだった。スイスとドイツの国境を越え、ボーデン湖をフェリーで横断する。自転車を乗せて十五ユーロ、一時間の船旅だ。五月とはいえ、湖を渡る風は結構寒い。船内では、コーラと同じ値段だったのでビールを。ドイツと言えば、やっぱりこれ。コクがあって、美味い。

ボーデン湖のフェリー
BODENSEE — 自転車を乗せて、湖を一時間

対岸に着き、南を眺めると、遠くに何かがそびえている。アルプスだ。イタリアへ抜けるには、一度はあれを越えねばならないらしい。夜九時に陽が沈むまで走り、ようやく見つけた宿は、七十ユーロのツイン。二十二年前なら野宿していたが、今はもう大人だ、ケチるところじゃない。自転車でリッツに乗りつけるのが、オレのスタイル。夕食は、ばかでかいビールに、山盛りのサラダ、チーズたっぷりのコロッケ、そしてパスタ。とにかく、量が大きい。この日走った距離は、百キロ。体が動かなくなって、そのまま眠りに落ちた。

ドイツの大盛り夕食
DEUTSCHLAND — 味より量。これぞ郷土料理

ブログ原文 ▸ 欧チャリ3

5.15

ドイツ → オーストリア / 呼ばれて来た

2019.05.15(水)

「人生は突然、変わる。考え方で、変わる。」

朝食は、今日も驚くほどの量。美味いが、さすがに毎日だと舌も慣れてくる。九時に出発し、昼はドイツ最古の街・ケンプテンへ。あたたかいコーヒーと、朝食の残りでこしらえたサンドイッチでランチ。曇り空の下、小さな村をいくつも抜けていくと、やがて遠くに、雪をいただいた山が見えてきた。アルプスだ。イタリアへ行くには、あれを越えねばならないのか。

雪をいただくアルプス
ALPEN — 道の向こうに、雪の壁が現れる

このあたりは、チロル地方。日本では、知らない人のいない名前だ。午後四時、国境を越えて、オーストリアへ。この日の走行は、八十キロ。とにかく寒くて、早くイタリアの陽射しが恋しくなる。

オーストリア国境
ÖSTERREICH — チロルを抜け、国境を越える

夜は、こちらに嫁いで八年というユウコさんのお宅へ。日本食を振る舞っていただいた。味噌汁に、生き返る。ヨーロッパは大好きだが、食だけは、やっぱりアジアが恋しい。ユウコさんは、一冊の本をきっかけに「宇宙」に興味を持ち、人生が一八〇度ひっくり返り、この四月にYouTubeで僕を知ったという。そして、僕が旅に出るその朝に、連絡をくれた。——人生は、突然変わる。考え方ひとつで、変わる。僕は、呼ばれてここに来たのだ。旅はまだ始まったばかりなのに、また何かが大きく動きだす、そんな予感がした。

ユウコさん宅の日本食
和食 — 味噌汁に、生き返る夜

ブログ原文 ▸ 欧チャリ4

5.16

一七七三mの峠に、泣く / オーストリア

2019.05.16(木)

「登りきった喜びは、まるごと自分のものだ。」

朝、ユウコさんがノイシュバンシュタイン城へ、車で連れていってくれた。ディズニーのシンデレラ城のモデルになった、あの城だ。二十二年前は先を急いで寄れなかったから、ようやくミッション完遂。チロル地方のロイテという村を後に、いよいよ、ひとり南へ向かう。

ノイシュバンシュタイン城とQ
NEUSCHWANSTEIN — 22年越しの、シンデレラ城

レヒ川に沿って、ひたすら登る。地図アプリは、なぜか自転車にこの道を案内しなかった——その理由を、あとで身をもって知ることになる。坂道はどこまでも続き、やがて雪が深くなってきた。延々と、ただ登る。脚はちぎれそうで、何度も泣いた。(途中、UFOらしきものまで見た気がする。)

雪深い峠道
SNOW — 雪が深くなる。それでも、登る

そして、標高一七七三メートルの峠に到達。かなり泣いたけれど、その達成感は、すさまじい。ああ、いい旅をしているなと、心から思う。重い荷を積んだ自転車で、誰の力も借りずに登りきった頂。その喜びは、まるごと、自分だけのものだ。峠を下った街はオフシーズンで宿がどこも閉まっていて、夜八時からひと苦労。でも——それすらも、ひとり旅の醍醐味だった。

標高1773mの峠
1773m — 泣いて、登って、たどり着いた頂

ブログ原文 ▸ 欧チャリ5

51COUNTRY
5.17

リヒテンシュタイン、サクッと / → スイス

2019.05.17(金)

「世界で六番目に小さな国を、あっという間に。」

オーストリアからリヒテンシュタインへ。今日は自転車ロードが多く、走りやすい一日だ。スーパーで水とお菓子を補給する。クッキーをつまみながら走らないと、三年前のニュージーランドのように、ハンガーノックでぶっ倒れてしまう。やがて——国境。人生五十一カ国目を、自転車であっという間に踏み越えた。

リヒテンシュタイン国境、51か国目
BORDER — やった、ここが51カ国目の国境だ

オーストリアとリヒテンシュタインの国境線に、両足で立ってみる。もしこの瞬間、両国が国交を断絶したら、オレの体は真っ二つだ——なんて、くだらないことを考えて、ひとりニヤニヤする。これも、ひとり旅ならでは。美しい沼地にはアヒルが群れ、世界で六番目に小さなこの国は、まるでスイスの、のどかな田舎のようだった。

首都ファドゥーツの中心地
VADUZ — 首都の中心は、観光客でにぎやか

首都ファドゥーツは、中国人観光客であふれていた。タックスヘイブンとして知られるこの国の銀行を眺めながら、「いつか、ここに口座を持つのもいいな」なんて、夢をふくらませる。そして、ふたたびスイスへ。

リヒテンシュタイン銀行
BANK — タックスヘイブンの国の、夢の入口

ブログ原文 ▸ 欧チャリ6

52COUNTRY
5.18

アルプスを越えて、イタリアへ / スイス・クール → イタリア

2019.05.18(土)

「国境を、自分の脚で越える贅沢。」

スイス・クールの宿は、朝食付きで六千円。安い。九時半に出ると、朝市が賑わっていた。正午、スーパーでパスタとコーラのランチ。フォークも箸もなく、結局、手で食う。誰も見ていないから、これでいい。神秘的なトンネルを抜け、羊を守る番犬の姿に「ハイジの世界だ!」とひとり感激しながら、ぐんぐん登っていく。

アルプスのスプリューゲンの街
SPLÜGEN — アルプスのど真ん中の、美しい街

途中のスプリューゲンという街が、あまりに素敵で、泊まりたくなった。でも、先を急ぐ。そこからは、ひたすら登り。雪が深くなり、気温はおそらくマイナス。それでも、絶景だ。当初はアルプスを列車で越えようかとも思ったが、自転車にして本当によかった。自転車だからこその絶景、そして、この達成感。標高二千メートル超えは、自転車では人生初だった。

雪のアルプスの絶景
ALPS — 雪の絶景。これを、自分の脚で登ってきた

そして、山頂。緩衝地帯を越え、ひっくり返るようにして——ここからが、イタリア。ついに人生五十二カ国目に突入する。「オレの人生、悪くない!」と、思わず声が出た。国境を、自分の脚で越える。これ以上の贅沢が、あるだろうか。時刻は六時半。急に冷え込み、凍った湖のそばを、深い霧の中、ただ下っていった。

イタリアへ突入、52か国目
ITALIA — 峠の向こうは、52カ国目

ブログ原文 ▸ 欧チャリ7

5.19

ポモドーロに、泣いた日 / イタリア

2019.05.19(日)

「走って、腹を空かせて食べる飯は、なぜこんなに旨い。」

イタリア。泊まり客は、どうやらオレひとり。静かな朝食だ。今日は、全長六十キロのコモ湖の西岸を、ひたすら南下する。雨はパラパラと降る程度で、気にならない。午後二時すぎ、腹が減ってレストランに入り、白ワインとスパゲティ・ポモドーロを頼んだ。

コモ湖
LAGO DI COMO — 全長60kmの湖を、西岸沿いに南へ

先に来た白ワインが、のたうちまわるほど美味い。泣いた。そしてポモドーロ——トマトとオリーブオイルを麺に絡めただけの、最もありふれた一皿。その最初のひと口で、また泣いた。どんなに厳しく評価しても、これは間違いなく、人生最高のスパゲティだった。料理は、結局「加減」なのだ。注文を受けてすぐ茹で始めた、この茹で加減。しかも一流店ではなく、庶民的な食堂で、普通にこれが出てくる。この瞬間、イタリアは僕の「世界三大メシウマ国」入りが決定した。

スパゲティ・ポモドーロ
POMODORO — シンプルな一皿に、人生最高と泣く

居心地が良すぎて、つい一時間。先を急がねばならないのに。その後、後輪がパンク。ガラスの破片が刺さっていた。チューブを替え、タイヤの穴はゴムで補強。誰も助けてくれないけれど、自転車のスキルも、ずいぶん上達したものだ。夜は、コモの街のキャンプ場のキャビンへ。この日も、走った距離は百キロ超。初めて出した寝袋にくるまると、驚くほど暖かかった。今日は、ネットもない。それでいい。

キャンプ場の寝袋
CAMP — 初めての寝袋は、驚くほど暖かい

ブログ原文 ▸ 欧チャリ8

5.20 – 5.22

ひたすら南下、地中海へ / イタリア縦断

2019.05.20(月)— 05.22(水)

「風と、海と、ペダルの音だけ。」

寒いと覚悟したキャンプ場のキャラバンも、寝袋にくるまれば、意外なほど快適だった。クロワッサンとエスプレッソで、二ユーロの朝食。それで、十分すぎる。イタリアを、ひたすら南へ。途中のスーパーで買い込む水やお菓子は、スイスの半額以下。同じヨーロッパでも、こうも物価が違うのか。

イタリアをひたすら南下
SUD — イタリアを、ただひたすら南へ

七百メートルの峠を越え、車の多いジェノバの喧噪を抜けると——ついに、地中海。空気が、ガラッと変わった。泣いた。これまでサントリーニ島、マルタ、トルコ、レバノンと、地中海には何度も接してきたけれど、ここは別格だ。光が違う。風が違う。この世に楽園があるのなら、それは間違いなく、地中海だと思う。泣いているのは、アレルギーのせいだけじゃない。

愛しの地中海
MARE — 光が違う。風が違う。愛しの地中海

翌日は、地中海を左手に、ひたすら走る。峠も坂もほとんどなく、天気は上々。まるで、ご褒美のような走りだ。自転車と歩行者の専用道がどこまでも続き、無料のビーチが並ぶ。ランチは、イカとイイダコの、きしめんのようなパスタ。地中海に出てから、料理はトマトとオリーブオイルと海鮮が主役になった。今回の旅で、いちばん長く、いちばん楽しい走り。移動中は、ネットも届かない。風と、海と、ペダルの音だけ。「オレは今、自転車で地中海を走っている。なぜだろう」——その問いさえ、心地よかった。

地中海沿いの最高の走り
RIVIERA — 最楽最高の、海岸線

ブログ原文 ▸ 欧チャリ1011

53COUNTRY
5.23

イタリア → フランス → モナコ / 人生最高

2019.05.23(木)

「世界の富が集まる国に、テントとサンダルで。」

キャンプ場のWi-Fiが、夜中三時にようやくつながった。家族と、そして今日から合流する仲間に、連絡できた。朝食はイタリア風のクロワッサンとカプチーノ。美味いけれど、正直、帰国したらしばらくパンはいい。さあ、ラストランだ。イタリア側の国境から、フランスへ。意外なほど"国境らしい"国境で、銃を持った人が立っていた。パスポートのチェックは、ない。

フランスに入国
FRANCE — 国境を越え、24年ぶりのフランスへ

フランスは、二十四年ぶり。前回は二十二歳、大学生のとき、オーケストラの演奏旅行で訪れたパリだった。その旅で、ジャズピアニストの山下洋輔さんに「旅をしてると、面白いことがたくさん起こるんだよ」と声をかけられ、帰りの機内で「就職活動をやめて、卒業後は旅に出る」と決めた。あの一言が、今のオレを作った。その国に、二十四年ぶり、今度は自転車で戻ってきた。胸が、熱い。

モナコに入国、53か国目
MONACO — 53カ国目に、自転車で入国だ

そして——モナコ。人生五十三カ国目に、自転車で入国だ。F1モナコGPのコースを、自分の自転車で走る。世界中の富が集まるこの国に、テントとサンダルでたどり着いた。人生最高、としか言いようがない。メトロポールホテルの前では、待っていてくれた仲間たちと再会。ずっとひとりだった旅に、にぎやかな時間が戻ってきた。冷えた白ワインで、乾杯。

モナコの街並み
MONACO — 世界の富が集まる、モナコの街

ブログ原文 ▸ 欧チャリ12

5.24

モナコ、最高波動の日 / 仲間と合流

2019.05.24(金)

「ずっとひとりで漕いできた旅の、最高のごほうび。」

今日は、モナコの日。八名の仲間が、世界の果てのこの地に集まった。この旅は、三月の久高島で出会った仲間たちと、沖縄・恩納村のバーで「勢い」で決まったものだ。「モナコに行くなら、僕は自転車で行くよ」——あのときのひと言から、すべてが現実になった。

モンテカルロ
MONTE CARLO — ニースから、モナコの中心へ

ちょうど、F1モナコGPの日だった。街中を、スーパーカーがマッハで駆け抜ける。壮大なる道楽だ。ブルネイ、香港、シンガポール、アブダビと富裕な国は見てきたが、モナコは別格。さりげなく、本物の大富豪がウヨウヨしている。クルーズ船も、フェラーリの赤も、すべてが現実離れしていた。グランプリのコースに、スーツ姿で立つ。こんな日が来るなんて、誰が予想しただろう。(このスーツ、旅に出てから思い出して、仲間に日本から運んでもらったのだ。あるとないとで、モナコの意味がまるで変わった。)

モナコグランプリのコースに立つ
GRAND PRIX — GPのコースに、スーツで立つ

カジノ・モンテカルロにも、もちろん入る。仲間のひとりは、見事に勝ち逃げ。オレはギャンブルに向かない星のもとに生まれているので、ただカクテルを楽しむだけ。ずっとひとりで漕いできた旅に、ぽっと灯った、にぎやかな一日。仲間がいて、富の都があって、そこへ自分は自転車でやってきた。間違いなく、最高波動の一日だった。この地には、また必ず来る。今日はその、下見だ——それも、チャリで来たんだよ。

カジノ広場のフェラーリ
FERRARI — 広場に集う高級車。この赤の、なんとセクシーなこと

ブログ原文 ▸ 欧チャリ13

5.25 – 5.26 / 帰国 / HOMEWARD

フランス → 帰国 / ニース → 福岡

2019.05.25(土)— 05.26(日)

「一つの目標が、たくさんの条件を満たしていく。」

仲間と過ごしたニースの民泊を後に、スーツに着替えて帰路につく。五部屋にバスが三つ、広いリビングまである宿で、人数で割れば驚くほど安かった。にぎやかだった数日間が、嘘のように静かになる。ビジネスクラスの機内で、ひとり、二週間の旅を反芻した。

コートダジュールをスーツで走る
CÔTE D'AZUR — スーツで自転車、最後の海岸線

トラブルらしいトラブルは、タイヤのパンクと、変換プラグの忘れ物くらい。前者はチューブを替えて完璧、後者は千円ほどで解決。あとは、ほんとうに、すべてが順調だった。ひとりで二週間、自転車でヨーロッパを走り抜けて、大きな怪我も病気もなく帰れる。それ自体が、いちばんの幸運だったのかもしれない。

帰国便の機内食
HOMEBOUND — ANAビジネスクラスで、日本へ

一つの「目標」を立てると、それが、たくさんの条件を勝手に満たしていく。五十三カ国目も、お金持ちの国の空気も、アルプスの絶景も、地中海の光も、仲間との再会も——ぜんぶ、「自転車でモナコへ行く」という、たった一つの目標が連れてきてくれた。五月二十六日、成田を経て福岡着。自転車を受け取り、タクシーで家へ。ただいま。

ブログ原文 ▸ 欧チャリ1415

ひとりで、ペダルを漕ぐ。登り坂で泣いて、地中海で笑って、知らない街で道に迷う。誰も助けてくれないけれど、だからこそ、ぜんぶが自分のものになる。お金持ちの国を、テントとサンダルで駆け抜けた二週間。豊かさとは、たぶん、自由のことだ。

— Q / 一つの目標が、すべてを連れてくる。